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大量閉店「ヴィレヴァン」経営が犯した最大の失敗 山ほどある判断ミス、一番まずかったのはこれだ

東洋経済オンライン / 2024年9月10日 10時0分

初期のヴィレヴァンはそれでもよかっただろう。初期のヴィレヴァンで働いていた正社員について菊地は「ヴィレッジヴァンガードが好きで来てくれていたので一番大事な『センス』をある程度持ち合わせてくれているので助かる」と書いている。ヴィレヴァン好きがそこに集まり、しかも人数も少なければそれだけ菊地の言う「センス」を肌で感じることができたのだ。

しかし、ヴィレ全さんのインタビューで述べられていた通り、近年では社員教育がなかなかうまく進まないこともあって、この「本の隣に何を置くか」という「センス能力」が著しく低下してしまった。

そして、それに拍車をかけたのが、ヴィレヴァンの多店舗化だ。ショッピングモールを中心として出店が進んでいくなか、菊地が当初言っていたような意味での「センス」がなかなか理解されなくなっていく。

しかも、店舗が増えれば「他の人とちょっと違うことをする」感じがなくなってしまう。ありとあらゆる面で、ヴィレヴァンはベネフィットを失っていったのである。

こうした「理念」をどのように継承していくのかは、とても難しい問題だ。これを考えるときに参考になるのが、世界最大のコーヒーチェーン「スターバックス」である。

スタバは、家庭でも職場でもない第三の場所「サードプレイス」を提供する、といった理念のもとで経営戦略を進めている。よく言われる話だが、スタバを利用する人の多くは、「コーヒー」という具体的な商品を求めてそこに来ているのではない。むしろ、その「サードプレイス」が喚起する空間や、「そこにいる私たち」というような特権意識を刺激されるからこそ、そこに行くのだ。まさにスタバのベネフィットは「サードプレイス」ということになる。その点でヴィレヴァンと同じように「スタバ」という「イメージ」を売っているともいえる。

とはいえ、この理念もまた、曖昧だ。「サードプレイス」は目に見えない概念だし、しかも元々の「サードプレイス」という意味からも少しズレている。スタバ(というよりも、その実質的な創業者であるハワード・シュルツ)オリジナルの概念だからだ。

だから、スタバもまた常に危ない状態にあるといってよい。特にヴィレヴァンよりもはるかに店舗数は多く、全世界にまたがっている。常に「理念」は崩れる可能性がある。

あのスタバにもピンチがあった

実際、スタバのこれまでの歩みも決して盤石ではなかった。例えば、2008年にスタバは初の赤字決算を計上し、経営危機に陥った。店舗が拡大するにつれて、「サードプレイス」的な空間がなくなっていき、単純にコーヒーを飲む場所になってしまっていたからだ。マクドナルドが安売りコーヒーを仕掛けると、すぐにそちらに客が流れてしまった。まさに、スタバのベネフィットが失われていったのだ。

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