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大量閉店「ヴィレヴァン」経営が犯した最大の失敗 山ほどある判断ミス、一番まずかったのはこれだ

東洋経済オンライン / 2024年9月10日 10時0分

このとき、ハワード・シュルツはCEOの座から降りていたが、これを機に復帰。彼が行ったのは、全米のすべての店舗を一時的に閉店し、社員や従業員への教育をやり直すことだった。もう一度、スタバの持つ「ベネフィット」を、働く人たちに共有し直したのである。

これはもう何年も前のアメリカの話だが、スタバがこのような教育に力を入れているのは、現在でも続いている。アルバイトには80時間もの研修を行い、徹底したスタバの「理念」を入れ込む。「理念」自体がベネフィットになっている会社にとって、従業員教育をどのようにするのかは、大きな問題だとわかる事例だろう。

その点、ヴィレヴァンにおいて、適切な従業員教育がなされなかったのは、致命的なことだったのだとも思えてくるのだ。

ヴィレヴァンを「ベネフィット」という点から見ていくと、その経営不振の原因も、わりとクリアに見えてくる。

ヴィレヴァンは「センスがいい」という「イメージ」を売る店であり、その目に見えない概念を売るためには、社員にそのイメージが共有されている必要がある。しかし、それが途絶えてしまった現在(ヴィレヴァンは社員登用のハードルが高く、アルバイトでありながら、職責の大きな店長として働く人が多く存在してきた)、ヴィレヴァンは当初のような「ベネフィット」を人々に与えることができなくなってしまったのだ。

また、ヴィレヴァンの場合はセンスを養ううえで、「仕入れ」が重要な要素になってくる。かつては各店舗で行っていた仕入れが、コロナ禍で本部一括になった……というのは最近語られ出していることだが、その間に従業員の入れ替わりは進んでいる。

また最近では、各店舗での仕入れは復活しつつあるというが、取材をしていると「たしかに仕入れはできるが、売り切らないと、翌月の予算を下げられてしまう」という話も聞く。「それじゃあ誰もリスクを取らないよ」という感じだし、確実に売れるものを置こうとするだろう。結果、店舗の「金太郎飴」化は進んでしまう……。

「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、現場主導の店作りをしてきたことで知られる企業だが、その理念は主権在民ならぬ「主権在現」(主権は現場にある)という4文字で表現されている。その結果、その立地や、地域に合わせた業態を多く生み出した。

例えばシンガポールでは、日本に全振りした「ジャパンブランド・スペシャリティストア」なるコンセプトを押し出し、現地では高価な日本の食を、手頃な価格で販売している。輸入だと高いので、現地にある日系企業の食品工場と手を組んで作ってしまう……という大胆な発想の転換があるのだが、これも消費者と接している現場を尊重するからこそ、見えた勝機だろう。

自社が、消費者に提供しているものは何なのか? ヴィレヴァンの凋落は、多くの人に「顧客視点」や「マーケティング」、「(本当の意味での)権限委譲」の大切さを教えてくれるのだ。

ちなみに…

谷頭 和希:チェーンストア研究家・ライター

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