ヨーカドー「大量閉店」で晒された本質的な"弱点" 食品中心の店舗でも透ける「消費者の見えてなさ」
東洋経済オンライン / 2024年9月13日 22時0分
実際、「地域に合わせた商品を売る」というのは、簡単なようでいて難しい。
この点で、興味深い例がある。シンガポールにあるドン・キホーテ(DON DON DONKIという)で、「焼き芋」が爆発的に売れたという事例だ。熱いものが熱帯地域で売れるわけがないと思っていたのだが、それは日本人の思い込みで、現地の人はデザート感覚で食べていたという。結局、焼き芋売り場の確保のために、バラエティグッズやブランド品を減らした。
西川口に限らず、何を置くのがその街に適しているかは、なかなか予想がつかない。だからこそ、トライアンドエラーで顧客の反応を見ながら商品を変えていくことが必要だろう。大事なのは柔軟性だと思われる。
近隣の中華食材屋と同じラインナップを売っているヨーカドーに、その柔軟性はあるのだろうか。
一方、ドンキはと言うと…
ドンキの話をしたが、実は西川口にもドンキがある。しかも、ヨーカドーからそう遠くない距離。ほとんどチャイナタウンの中にあるといってもいい場所で、黄色と黒の派手な外観が街の中で目立つ。
さっそくその店内に入ってみると、まず驚かされたのは売り場構成だ。1階が日用消耗品で、2階が食品。3階は家電製品やブランド品が売られている。食品などが扱われる場合、通常は1階に食品売り場が作られることが多いが、ここはそうでないのだ。
さらに面白いのは、2階の食品売り場を見ると、興味深いことに中華食材がほとんどないのだ。代わりに目立つのは、韓国やフィリピンの食材やお菓子。特にフィリピン食材には力を入れているようで、「フィリピンで大人気」と淡水魚の「ティラピア」が冷蔵什器の中にたっぷり入っていたりもする(ちょっとびびった)。
一見すると、意表を突く売り場構成だが、実はこれ、かなり合理的だと思う。というのも、この選択は、現在の西川口で足りないものを補う姿勢が見えるから。「かゆいところに手が届く」のだ。
チャイナタウン、といったが、西川口は中国系だけではない、さまざまな人種が交ざり「リトルアジア」ともいうべき街区となっている。特に川口においてフィリピン系の人々は、中国・韓国に続くオールドカマーと呼ばれ、昔からその地に根付いてきた。
一方、西川口周辺にはフィリピン食材店などがほぼないため、フィリピン食材を少し前面に押し出して売るドンキの選択は、競合の多い中国食材を売るより、よほど合理的なのである。
また、1階を日用消耗品にしたのも合理的だ。というのも、周りに日用品がしっかりと揃うところがあまりないから。何か困ったことがあればドンキに行けばいい、となるのだ。
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