子どもの部活やスポーツはどこまで頑張らせる? 「勝利至上主義」の世界で生きる子を支えるには
東洋経済オンライン / 2024年9月14日 9時0分
「子どもにスポーツをどこまで頑張らせてよいのか」「試合でつい喝を入れてしまう」──。部活動やクラブチームでスポーツに取り組む子どもの親には、こうした葛藤を抱えている人も多いかもしれない。メンタルヘルスの観点から、スポーツをする子どもにどう接すればよいか、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所研究員の小塩靖崇氏に聞いた。
そもそも思春期はメンタルヘルスの不調を抱えやすい
──子どもがスポーツをする環境において発生しがちなメンタルヘルスの課題の根幹には、何があるのでしょうか。
【図で見る】スポーツでは折れない「打たれ強さ」が求められがちだが、本来大切なのは、折れても新たな形としてさらに大きくなることではないか
前提として知ってほしいのが、思春期はメンタルヘルスの不調を抱えやすいタイミングだということです。学問的には、思春期は12歳から25歳までを指しますが、大人で精神疾患を持つ人のうち70%は25歳未満に発症しているというデータもあります。
そもそもメンタルヘルスの不調が発生しがちな時期に、部活動やクラブチームの環境が閉塞的でストレスフルだと、さらに発生リスクが高まってしまうのです。
現代の子どもたちは、部活動や学校の宿題だけでなく、塾や習い事などハードスケジュールをこなしています。頑張るほどに忙しくなり、生活習慣を乱してしまう傾向はあるでしょう。しっかり睡眠を取れていないと、思考や判断のコントロールを司る前頭葉が育たず、スポーツも勉強も悪循環に陥ってしまいます。
──子どものメンタルヘルスに悪影響を及ぼす、保護者の声かけや態度の例を教えてください。
試合後や練習後の子どもに、「こうしたらよかったんじゃないの」「なんでこうしなかったの」などと質問攻めにするのはよくありません。スポーツに限らず、塾や習い事にも当てはまりますが、これは子どもに非常にプレッシャーがかかります。
ある子どもから聞いた話ですが、試合中は、他の誰より親の声が耳に入ってくるそうです。例えば、本当は左に行こうと思っていたのに、親の「右行け〜!」という声が聞こえると、つい右に動いてしまう。自分がプレーしているはずなのに、親の指示に従ってしまうのだというのです。
これが習慣化すると、子どもは自分で考えられなくなり、親の指示を待ったり、常に正解を探ってしまったりします。「子ども自身に考えさせたいので、親の声出しはさせない」というチームもあるほど。子どもへの期待値が高いほど口を出してしまうものですが、ぐっとこらえて、子どもが自ら話し出すのを待ちましょう。
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