ホスピス医が語る「人生最後の日」に人が望むもの 「この世を去る」前に気持ちの変化が訪れる
東洋経済オンライン / 2024年9月15日 16時0分
人間にとって、人生最後の日が近づくというのは究極の苦しみかもしれません。ですが、人は「死」を前にすると必ず自分の人生を振り返り、その中であらためて「自分にとって本当に大切なもの」を見つけ、「生きる意味」を自らの力で生み出していくことができると、医師の小澤竹俊氏は語ります。
ホスピス医として4000人を看取ってきた小澤氏が振り返る、これまで出会った患者さんたちの「最後の日」とは。
※本稿は、小澤氏の著書『新版 今日が人生最後の日だと思って生きなさい』から、一部を抜粋・編集してお届けします。
死を前にした親が子に望むのは「人格」と「人望」
私がこれまでに看取りに関わった患者さんの中には、幼いお子さんを残していかれる方も、たくさんいらっしゃいました。
そうした方々の多くは、決してお子さんに「地位や名誉を手にしなさい」「お金をたくさん稼ぎなさい」などとは言いません。
女親であれ男親であれ、会社員であれ経営者であれ、みな「勉強はそこそこでもいいから、人に愛されてほしい」「周りの人と支え合って生きていってほしい」と望むのです。
たとえば、私が受け持っていたある会社の社長さんは、がむしゃらに働いて、一代で会社を大きくしました。彼は人を信頼するのが苦手で、どんな仕事でも最終決定は自分で下していたため、常に多忙でした。
もちろん、家庭や自分の健康を顧みることもなく、がんが発見されたときには、病状はかなり進行していました。体力は急激に衰え、当然のことながら、出社どころではありません。ワンマンだったため、社員との関係もうまくいっておらず、がんであることがわかったとたん、部下や取引先は潮が引くように離れていきました。
その患者さんは、「自分の人生は、いったい何だったんだろう」「自分の生き方は正しかったのだろうか」と考えるようになり、私にこう言いました。
「私は心のどこかで、自分はみんなから好かれている、信頼されていると思っていました。でもそれは、おごりでした。みんなが信頼していたのは私ではなく、私が動かしている仕事やお金、それだけだったのです。あれだけ飲んで食べて語り合って、わかり合えるところがあると思っていましたが……。こんなに寂しいことはないですね」
大切に育ててきた会社すらも失うことになってしまい、彼は「せめて子どもには、人間関係の大切さを、ちゃんと伝えたい」と思ったそうです。
この世を去る前に、本当に大切なこと、お子さんに伝えたいことがわかり、気持ちに変化が訪れたのでしょう。その患者さんはとても穏やかな表情になっていました。
老いて、病いを得ることで人生は成熟していく
この記事に関連するニュース
-
末期がんの父 家での看取りを決めた母 息子はカメラで家族を撮り始めた 最期の40日間を記録した映画「あなたのおみとり」
まいどなニュース / 2024年9月9日 11時0分
-
「余命半年だったけれど、2年も生きている」腫瘍内科医が語る、医師宣告の余命宣告が当たる驚愕の確率
プレジデントオンライン / 2024年8月26日 10時15分
-
余命は1カ月どころか週単位…70代女性がよろめく体を奮い立たせてやった驚くべき行為と奇跡的に生きた年月
プレジデントオンライン / 2024年8月21日 9時15分
-
「死を前にして何に後悔する?」余命を告げられた患者の10の切実な吐露から健常者が学べること
プレジデントオンライン / 2024年8月21日 8時15分
-
「死ぬつもりはない」腫瘍が皮膚から飛び出し余命宣告、乳がんステージ4YouTuberの闘う力
週刊女性PRIME / 2024年8月18日 21時0分
ランキング
-
1セルフレジで会計後、「二重スキャン」していたことが発覚! お店に行けば“返金”は可能ですか? 詐欺だと思われないか不安です…
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月15日 4時30分
-
23時間“閉じ込め”&100万円請求…東京中央美容外科(TCB)で多発する高額商法の実態 患者の証言「スタッフの目は死んでいた」
文春オンライン / 2024年9月14日 7時0分
-
3冷凍王子が厳選CO・OP「お買い得の冷凍野菜」5選 「下処理が面倒な野菜たち」の楽ちんメニューも
東洋経済オンライン / 2024年9月15日 11時0分
-
4Snow Man目黒蓮の起用で“テレビ離れ世代”に訴求 業界の覇者「レグザ」が自信のワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月14日 11時10分
-
5「やりたいこと」を探すほど自信が奪われる理由 コストをかけなくてもやる気が出てくる習慣とは?
東洋経済オンライン / 2024年9月15日 14時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください