あの石神秀幸が「麻辣湯」チェーンを営む深い理由 中国のローカルフードを、なぜ手掛けるように?
東洋経済オンライン / 2024年9月16日 10時0分
「七宝麻辣湯」のオープンの半年後に滋賀の南草津に「シャンシャンタン」というお店ができたが、しばらくはその2軒のみだけだった。中国出身の人がお店をやるようになったのはだいぶ後になってからだという。
コンセプトは女性が入りやすいお店。この頃、カップの「スープ春雨」が人気だったことに注目し、「春雨」を軸にメニューを作り上げていった。現地だと麻辣湯は「スープ春雨」という売り方はしていないが、日本で広めるにあたってわかりやすくするために春雨を軸にしたのだ。
苦戦が続いたが2012年に転機が訪れる
こうして「七宝麻辣湯」は誕生したが、オープンからしばらくは苦戦が続いた。
「序盤の売り上げはかなり厳しかったです。いろいろな人から口々に『春雨なんか』と言われました。イメージとして『ヘルシーなだけで美味しくない』と思われていたんだと思います。人はなかなか知らないものには手を出さないので、オープン景気が作りづらかったのです。
私がオリジナルで考えたものなら私の独りよがりかもしれませんが、海外でこれだけ人気なのにどうして伝わらないんだろうと悩みました」(石神さん)
渋谷店がオープンしてから5年ほどは厳しい状態が続いていたが、赤坂店をオープンした2012年に転機が訪れる。
鳴かず飛ばずの状態が続いていたため、「料理」としてのレベルをさらに上げる努力をしたのだ。もともとは多店舗展開を前提に考えていたので、スープは工場に外注して濃縮したものを使っていたのだが、お店でスープを炊くことにした。
ここからわかりやすく一気に売り上げが上がっていく。一度食べたお客さんがリピーターになり、口コミでも広がって、来客数もうなぎ上りになっていった。
「意外と人間の味覚というのは侮れないなと改めて感じた瞬間でした。それからは常にブラシュアップを続け、美味しさを追求し続けています」(石神さん)
トッピングや辛さだけでなく、スープの味もアレンジできるようにするというアイデアは初めからあった。ベースのスープを作り、そこにペーストやスパイス、オイルなどでうまくアレンジできるように味を構築していった。これは現地にもない発想で、トッピング×辛さ×スープで無限のアレンジをすることができる。
「麻辣湯はまだまだ無限の可能性があり、研究に値する食べ物です。これからも進化、深化を続けていきます。
スープを変えればスパイスやオイルも変えたくなる。スパイスを変えればオイルやスープも変えていく。こうやって一歩一歩味が進化していきます。味が完成する日は来ないのではないかとすら思っています」(石神さん)
スープは必ず店舗で炊くこだわり
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