映画「ラストマイル」ヒットの鍵は"動画配信"戦略 「鬼滅の刃」が新たな映画化への道筋を作った
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 10時0分
映画『ラストマイル』が大ヒットしている。8月23日に公開された後、興行収入ランキングで3週連続1位をキープ。9月14〜17日の連休では3位だが累計38.5億円とまれに見る興行収入となっている。衰える気配を見せず、100億円も視野に入ってきた。映画興行は最初の週末がピークで、その後どれだけ下がらないかが成功のカギだが、なぜこんなに勢いが止まらないのか不思議だ。
2つのテレビドラマのファンが映画館に押し寄せた
この映画は「シェアード・ユニバース」を売りにしている。2018年と2020年にそれぞれ放送されたドラマ「アンナチュラル」「MIU404」と世界線(ユニバース)を共有(シェアード)し、それぞれの登場人物が出てくるのだ。2つのテレビドラマのファンが映画館に押し寄せたのがヒットの大きな理由だろう。
ただドラマの人物たちは映画の本筋にあまり絡まず、それほど「シェアード」してはいない。そのことに不満げな感想をXで投稿しているファンもいた。だが炎上というほどではなく、逆に絶賛する投稿が圧倒的に多い。個人的には爆弾テロと犯人像のギャップに違和感があるのだが、そんな細かいことを言う人は誰もいない。
脚本家・野木亜紀子を筆頭に、監督・塚原あゆ子、プロデューサー・新井順子がすべての作品に関わっており、そのチームのファンが育っている。ドラマと映画で一貫して、エンターテインメントの中に社会問題を織り込んでいることも支持される理由だと思う。
と、ここまではわかるのだがこれほどの驚異的メガヒットの理由はいまひとつ見えないでいた。テレビドラマの映画化は、ドラマ終了後から間をあまり置かないのが普通。「MIU404」から4年は長すぎだ。さらに、ドラマの「劇場版」とするから意味がある。「シェアード・ユニバース」と関連性をいくら強調しても、ドラマの映画化ではないものが大ヒットするとは、これまでとは戦略がずいぶん違う。
ドラマの映画化戦略に起きている変化
どういうことかと考えていたら、Facebookで東京工業大学教授の柳瀬博一氏がこんな投稿をしていた。
「ラストマイルのヒットは、鬼滅の刃で確立された<テレビと映画を動画配信が繋ぎ動画配信が中心となる>新しいコンテンツ消費市場が形成された流れが、ピッタリ当てはまる。」
柳瀬氏とは日経ビジネス在籍中から交流があり、コンテンツビジネスについての独特の見方に敬服してきた。そんな柳瀬氏の投稿に、私ははたと膝を打った。なるほど、『鬼滅の刃』のメディア戦略が『ラストマイル』ヒットの謎を解くカギか!
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