フランス新首相の就任はEU瓦解への前奏曲だ 「民主主義を守る」戦争を止められないNATOとEUの限界
東洋経済オンライン / 2024年9月28日 9時0分
2024年9月5日、記者会見を行うフランスのミシェル・バルニエ次期首相。国民議会後の2カ月間、首相不在の時期があった。バルニエ氏の就任は、今後のフランス、ひいてはEUのあり方に大きな影響を与えそうだ(写真・2024 Bloomberg Finance LP)
世界は相変わらず混迷の中にある。ガザもウクライナも、ますます先行きが見えなくなっている。膠着状態というよりも、複雑に絡み合ったヒモがもつれて、それを解く糸口さえ見つからない状態である。戦局とは裏腹に、やめられない戦争継続の泥沼にはまっているといえる。
解決策は政治的判断だが、その判断は民衆の意思によって決まる。少なくとも民主主義国ではそうなるはずなのである。しかし、生産のサプライチェーン化によって生産力を失い、金融依存に陥った先進諸国は、利潤獲得がきわめて困難な状況になっている。
利潤を得られなくなった西欧諸国
株式の配当や貸付利子の源泉は、もともと利潤である。利潤が獲得できなければ、配当や利子は、ゼロサムゲームの争奪戦にならざるをえない。これが長期不況を生み出している原因である。
20世紀において、先進国は、利潤の多くをアジア・アフリカの後進諸国からの不等価交換による利潤収奪によって得てきた。グローバルサウスといわれている諸国が、次第にこうした不平等貿易に難色を示しはじめることで、利潤獲得が困難になりつつある。
だからこそ、軍によるアジア・アフリカ諸国への厳しい締め付けが必要なのだが、それが今では防戦一方ときている。21世紀の世界の構造は、先進諸国、すなわちそれは西欧諸国だが、彼らが容易に利潤を得られなくなった時代であるといってよい。
だからこそ、西アフリカ、中南米、中東、ウクライナ、南沙諸島、台湾などで戦争の危機が生まれ、いずれの地域においても今や一歩も引けない状態だといえる。
少しでも引けば、たちどころに先進国の優位はなくなり、戦後の経済体制すらすべて崩壊する。だからこそ、ガザやウクライナの戦争で負けるわけにはいかないのである。
こうして、西欧諸国家ではいつのまにか、自由と民主主義という表向きの標語が次第に剥げ落ち、実質的には国家の利益をたぐる組織が次第に実権を握るようになってきている。
これを一般には、ディープ・ステートというが、もはや政治的主権は国民から、一部の支配者のほうに移っているともいえるのだ。
もちろん、国民もその利益のおこぼれを得ることで、こうした主権譲渡を受け入れざるをえなくなっていることも確かだ。だから、戦争という負担を背負ってまでも、戦争支持の政権を支持しているのである。
しかし、利益のおこぼれのトリクル・ダウンはつねにあるとは限らない。むしろそうでない場合のほうが多いかもしれない。そうなると、それまで従属的だった国民も怒りをあらわにすることになる。
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