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「肺に先天性障害」の中学生が生前に敢行した旅 修学旅行に付き添うツアーナースたち

東洋経済オンライン / 2024年9月30日 13時0分

株式会社アテンダントナース・馬場りな看護師

ツアーナース(旅行看護師)と呼ばれる看護師たちの存在をご存じでしょうか?

「最後の旅行を楽しみたい」「病気の母を、近くに呼び寄せたい」など、さまざまな依頼を受け、旅行や移動に付き添うのがその仕事です。

そんなツアーナースたちの派遣先のひとつに、修学旅行があります。旅先で体調を崩す生徒もいれば、クラスの中には障害のある生徒がいることもあります。今回は、生まれつき肺に障害を抱えた中学生の修学旅行に、ツアーナースが付き添います。

肺に障害がある双子の兄

吉田貴明と文哉(どちらも仮名)は中学3年生。2人は一卵性の双子兄弟だ。兄の貴明は、生まれつき肺に障害があり、具合のよくない日は、一日中ベッドで過ごすこともあった。兄弟は仲がよく、弟の文哉は兄のことを、それとなくだが、いつも見守っていた。登下校はいつもいっしょで、文哉は貴明がいることで、充実した学校生活を送ることができていた。2人は学業の成績もよく、3年生に進級すると、名門と言われる地域の公立高校への進学を目指して、お互いに切磋琢磨する日々が始まった。

【写真で見る】旅行に付きそう、ツアーナースの様子

ただ、2人には中学3年生だからこその悩みがあった。

「なぁ貴明、お前、修学旅行はどうする」

「そりゃ行きたいよ、ディズニーランドだぜ。俺だってスプラッシュマウンテンに乗りたいよ」

2人の自宅は岐阜県だ。小学校の修学旅行は隣の愛知県で、犬山城と明治村を回るコースだった。家族旅行でも行ったことがある場所だし、万が一何かあった場合でも、両親がすぐに駆けつけられる距離だ。しかし、中学校の修学旅行は東京都の浅草と千葉県のディズニーランドを巡る2泊3日の行程である。自宅から離れていることもあり、不安は大きかった。

それでもやはり、行ってみたい──。

「俺が行くと、お前、楽しめないだろ」

貴明が話を向けると、

「そんなことないよ。お前のことなんか気にせずに、俺は勝手に楽しむから」

文哉はそう言って笑った。もちろん、本心ではない。しかし、そうでも言わなければ、兄は気を使って、修学旅行への参加を断念してしまいそうだった。

株式会社アテンダントナースに所属する馬場りな看護師はこう説明する。

「修学旅行への付き添いも、私たちの大切な仕事です。弊社では“添乗看護師”という言葉を使うのですが、修学旅行は、健康な子どもたち。つまり、旅行に参加しても問題のない子たちばかりと思われがちですが、中には障害や病気を抱えている子もいます。だからといって、参加させないわけではない。すべての子たちに行く権利はある。本人が望めば、なんとかして連れて行ってあげたい。教育現場にいる大人は常にそう考えています。私たち添乗看護師は、その手助けをするために帯同するのです」

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