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「肺に先天性障害」の中学生が生前に敢行した旅 修学旅行に付き添うツアーナースたち

東洋経済オンライン / 2024年9月30日 13時0分

貴明と文哉が通う中学校は、3年生が150人弱の規模だ。各クラスに分かれ、岐阜県の中学校から貸し切りバスで、名古屋駅に移動し、そこから新幹線で東京に向かう。

貴明は、日常生活を送るうえではとくに支障はないが、肺の障害のために疲れやすく、体育は毎回見学だ。晴れた日に一日中屋外で活動すると、夜はぐったりしてしまうことも少なくない。修学旅行は5月だから、炎天下に晒されることはないが、それでも不安だ。

「貴明君の学年には、他にも健康上の問題を抱えた生徒が何人かいて、誰かひとりにナースがかかりきりになるわけにはいきません。またサポートが必要な生徒が仮に貴明君ひとりだったとしても、ナースが張り付くのは、好ましいことではありません。あくまでも他のみんなと同じように楽しんでこそ、旅の思い出はつくられる。だから、我々ツアーナースは、特定の生徒を常に意識はするものの、付かず離れず、見守るという態度で望みます」(馬場看護師)

「肩に戦争で亡くなった人の霊がしがみついている」

修学旅行の行程は、旅行代理店と学校職員がガッチリとタッグを組んで編み上げられる。学校側は心身の状態に注意が必要な生徒をリスト化して、保護者との連絡を密に取る。また明らかな疾患がなくとも、環境の変化のために、行った先でいつもとは違った反応を示す生徒も多い。

あるツアーナースがこんな話をしてくれた。

「関東にある、とある高校の修学旅行に付き添ったときのことです。行先は沖縄でした。修学旅行は思い出作りの場でもあるのですが、学習の一環でもある。だから、多くの学校は戦争記念館などの見学も、旅の行程に入れています。沖縄で、ひめゆりの塔に関連する平和祈念資料館を見学したときのこと、施設の外で待っていると、ひとりの生徒が泣きながら出てきたんです。

どうしたの、と聞くと、『肩に戦争で亡くなった人の霊がしがみついている』と言うのです。あとは泣きじゃくるだけ。どうしていいのかわからずにオロオロしていると、別のクラスを担当していた先輩ナースが飛んできて、『私がお祓いしてあげるね』と、バッグから小さなビニール袋に小分けした塩を取り出したんです。

そして泣きじゃくる生徒に向かって『これは沖縄の特別な塩だからね』と言い、その塩をひとつまみだけ、肩にパッパッと振りかけ、『これで大丈夫』と優しく笑いながら、生徒の背中をパンッと叩いたんです。そしたら、それまで泣きじゃくっていた生徒が顔をあげて、『ほんとだ、霊がいなくなった』って、笑顔に戻ってくれた。それ以来、修学旅行の付き添いでは、私も塩を持参するようになりました」

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