「石破氏の謝罪演説」から斎藤元知事に言えること 謝罪で成功した男と絶対謝らない男を分けた命運
東洋経済オンライン / 2024年9月30日 20時30分
しかしポジティブアピールは、日本人的メンタリティから見るとリスクもあります。謙譲の姿勢は日本の伝統的美徳であって、自分で自分を褒めるようなずうずうしい態度は、そうした保守的な感覚からは疎まれるか、少なくとも積極的な理解や支持を得られない可能性があります。
保守を代表する政党において、「お詫びを申し上げます」と言った石破氏。身内にも厳しい正論を是とする人の、いわばツンデレのような謝罪スピーチには評価する声が上がり、結果として新総裁に選ばれたこととは無関係とは言えないでしょう。
政治はそんな単純な思いや感情だけで動くものではないのかもしれません。しかし義理人情やメンツ、対面は何より大切だと考える人もいます。
石破氏の師匠でもある故・田中角栄元首相は義理人情を何よりも大切にしたという証言や評伝が多々あります。これは単にお金で派閥を大きくしたというより、人心掌握に長けていたことのほうが大きいということなのではないでしょうか。
同氏の秘書を務めた早坂茂三氏の著書などでも、いろいろエピソードが語られていますが、私は田中元首相が、お金以上に「メンツ」を重視した姿勢にとても興味を惹かれます。
お金以上に、「その人」の存在を尊重すること。資金援助するときは渡すほうが土下座をしてお渡ししろという気配り。人間心理の機微をよく突いたものだと思います。
古来歴史上でも、単なる経済的メリットだけでなく、メンツや尊厳を大切にして味方を増やしたリーダーと、逆に部下たちに援助を与えてもそれを生かせず、離反されたリーダーがいます。
これまで正論一本でやってきた石破氏が、最大の見せ場で謝罪を行ったことは、議員含め自民党員の投票を動かす大きな原動力になったと考えられます。ここぞという場面で、師の教えを実践できたのではないでしょうか。
一方、「謝らない男・斎藤前兵庫県知事」は…
時期を同じくして、パワハラ、公益通報の握りつぶし、優勝パレード資金問題など、さまざまな疑惑と批判にまみれた斎藤元彦・前兵庫県知事は、県議会による不信任決議に基づき、自ら知事失職を選択して県庁を去りました。
連日の報道や轟轟たる世論、記者会見での突き上げがあっても辞職しない斎藤氏は、「鋼のメンタル」とも呼ばれました。職務を遂行することを宣言し続け、テレビに出演して自身の正当性や業績アピールをしました。
もちろん会見などでの発言で、自分の言動に不適切な点もあったことは認めています。しかしそれは発言の表現などについてのものであり、問題の本質であるパワハラや公益通報への対応については、終始「適正だった」と言い続けました。
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