「ホテル三日月」経営危機からベトナムで復活の訳 日本企業が続々躍進「加速経済ベトナム」のいま
東洋経済オンライン / 2024年10月1日 14時0分
つまりは20年にわたってベトナムの成長を目にしてきたわけで、その盛り上がりをリアルに映し出したのが本書だということだ。
なお特筆すべきは、アミューズメント・レジャー、食、DX(デジタルトランスフォーメーション)、不動産、インフラ・電力など各分野においてベンチマークとなる進出企業に取材を試みている点だ。つまり読者は実際のビジネスを知ることで、ベトナムの現状をより明確に理解できるのである。
たとえば、個人的に強く共感できたのは「ホテル三日月グループ」の“社運をかけた取り組み”だ。かつて「ゆったり たっぷり の〜んびり」というフレーズが印象的なテレビCMを積極的に流していた千葉県木更津市のホテルがいま、ベトナムの観光業界で頭角を現しているのである。
ここに描かれた同社のストーリーは、まるでドラマか映画のプロットのように波瀾万丈でスリリング。そしてそこには、ベトナムの人々と日本の中小企業との理想的な関係が映し出されてもいる。
ベトナムのリゾート地といえば、すぐに思い浮かぶのは中部に位置するダナン市だ。世界的に有名なミーケービーチ沿いには、ハイアット リージェンシー ダナン リゾート&スパ、インターコンチネンタル ダナン サン ペニンシュラ リゾートなどの5つ星ホテルが軒を連ねる。
一方、ホテル三日月グループは2022年6月、5つ星ホテルが一軒も進出していないダナン湾に総額120億円を投じて「ダナン三日月ジャパニーズリゾート&スパ」(以下、ダナン三日月)を開業。従来の5つ星とは一線を画すスタイルで、総面積3万7000坪の敷地にホテルとヴィラ、温泉&アクアドームゾーン(全天候型スパドーム)、屋外プール、ビーチサイドクラブなどを擁する巨大リゾート施設をつくりあげた。
こう聞けば、なぜこれほどのチャレンジをしたのかと疑問を感じるかもしれない。しかし、その理由はいたって明快だ。創業者である前代表の故・小高芳男氏がダナン市に一目惚れしたことがきっかけだったのだ。
「2017年3月にホーチミン市に社員旅行に出かけた際に、当時87歳だった祖父(小高芳男さん)が『ここで商売をしよう』と言いはじめたのが端緒となった」と現代表の小高芳宗さんは話します。(101ページより)
ダナン市の人口は約125万人(2023年)だが、半径300km圏内の人口は1150万人に達し、流入観光客数の年間目標(コロナ禍前)は800万人。そんな同市の観光地としてのポテンシャルに着目した創業者の直感に基づき、ホテル三日月グループは日本のホテル三日月と同じ「親子3世代」をメインターゲットに据えたビジネスを展開することにしたのである。
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