「内戦や武力衝突リスク」を左右する「3つの特徴」 2度目の紛争を回避した国の多くが持つ志向性
東洋経済オンライン / 2024年10月4日 14時0分
内戦で戦場と化した近未来のアメリカを舞台にした映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が、このほど日本でも公開された。これに先立つ2023年3月に、世界中で「内戦」が急増している現状とその原因、アメリカでも内戦が勃発する潜在性が高まっている状況について、アメリカを代表する政治学者が分析し警告した『アメリカは内戦に向かうのか』(バーバラ・F・ウォルター著)の邦訳が刊行されている。同書第8章「内戦を阻むために今なすべきこと」から一部を抜粋してお届けする第2回(第1回はこちら)。
内戦やテロの背景でうごめくもの
暴力は、不正、不平等、不安などから生じる。そこから生じる憤怒や恐怖は、現状の体制ではどうにもならない。
しかし、体制は変革しうる。南アフリカの白人が、自民族支配強化のためにわざわざこしらえた体制を自らの手で変革するとは、誰の脳裏にも浮かばないことだ。
だが、支配のための維持費用があまりに莫大なものとなり、度重なる経済制裁からの脱却を後押しする財界の声もあり、彼らは体制を解体するほうを選んだ。南アフリカにできたことが、アメリカにできないはずはない。
過去半世紀にわたり専門家によって収集されたファクトやデータすべてから、アメリカにこれから起こることを正確に伝えられたらと願う。
しかし、いかに質の高いデータをもってしても、未来を知ることはできない。私たちにできるのは、他の市民と手を携えて、未来を平和へと舵を切る努力のみである。政治学者は数十年の歳月をかけて、内戦やテロの背景でうごめく諸力を研究対象としてきた。それらに伴う知見は、内戦の予期のみでなく、阻止のために用いることもできるはずである。
なぜ民主主義が衰退していくか、私たちは知っている。なぜ派閥が生まれるのか、どのような条件で派閥が力を得るかも知っている。暴動をけしかける過激派の早期警報や戦術だって織り込み済みだ。プラウド・ボーイズのようなグループには台本があるのだ。ならば、われわれ市民が未来を切り開く選択を手にしていないはずがない。われわれにだって台本というものがあるのだ。
内戦は頻発する現象ではない。武力衝突の条件を満たす諸国についても、実際に事を構えるのは年間4%未満である。
だが、ひとたび起こってしまったら繰り返されるのが常である。
1945~1996年に勃発した武力衝突の3分の1以上は、その後2回目の衝突が起こっている。2003年以降、リビアとシリアを除けば、あらゆる内戦は「続きもの」にほかならない。それら運動(あるいはその現代版)の指揮を執る者は、地下に潜るか亡命するかし、不安の再燃や、政府弱体化を待ちわびることになる。かくして新たな運動に着手していく。
「紛争の罠」
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