「内戦や武力衝突リスク」を左右する「3つの特徴」 2度目の紛争を回避した国の多くが持つ志向性
東洋経済オンライン / 2024年10月4日 14時0分
かつての指導者や兵が世を去り歳月を経ようとも、古層の断裂はそのままであり、神話や物語は生き続けている。
とりわけ衰退した民族集団が2度目の内戦の主体となるのは、かつて不満の原因となった事態が未解決、もしくは悪化している場合が少なくないためである。
次代の兵士は、喪失感と共に生き、自民族がさらなる格下げを甘受するのを指をくわえて見てきた。そんな彼らが本来自分たちのものであるはずのものを奪還しよう、そう心に決める。クロアチア人とセルビア人は過去にいくたびも戦火を交えてきた。イラクでのスンニ派とシーア派もである。
モロ人とフィリピン政府間の武力衝突も、多くの集団が消滅するかと思えば手を替え品を替え生まれてくるの繰り返しだった。エチオピア、ミャンマー、インドも同じことをさんざん繰り返してきた。専門家はこの事態を「紛争の罠」と呼ぶ。実際に戦う人々には申し訳ないが、外部からウォッチする立場からは都合がよい。中国やアメリカのように、1回のみの内戦経験で済んでいる国からすれば、優良な他山の石だからだ。
2014年、筆者は世界銀行の委託で、まさにこの「紛争の罠」を研究する機会を得た。1945~2009年のあらゆる内戦調査の中で、判明したことがある。2度目の内戦を回避しえた国の多くは、統治能力の質的強化への志向性を共有していたということである。民主主義を倍にまで推し進め、その体制をもスケール・アップしていた。
モザンビークは1992年に内戦を終結させ、一党支配から多党制選挙に移行してから、まさにその動きを見せている。リベリアは2003年に紛争を終結させてから、大統領権限を政治的に制限し、司法の独立性を向上させた。透明性の高い参加型政治環境を創出し、行政府権限制限に成功した国ほど、暴動の再発率は低下している。
3つの特徴
統治能力の質的向上とは、経済状況の改善よりはるかに意味を持つ。世界銀行委託による別の大規模調査では、ジェームズ・フィーロンが経済問題を担当した。
ある富裕な国が、その専門家が予測するよりお粗末な政府しか持ちえなかった場合、「内戦勃発リスクは著しく高い」事実が見出された。すなわち、アメリカのような富裕国は、1人当たり所得に変化が見られなかったとしても、政府が無能化し、さらに腐敗が進むと、武力衝突に至る危険は高くなる。
同研究がなされるまで、私たちはアノクラシー(専制国家と民主国家の中間にある状態)が内戦リスクを高めるところまでは把握していたが、理由を正確につかむには至っていなかった。
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