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「内戦や武力衝突リスク」を左右する「3つの特徴」 2度目の紛争を回避した国の多くが持つ志向性

東洋経済オンライン / 2024年10月4日 14時0分

アノクラシー国家が弱い理由とは何なのだろうか。別の観点からすれば、民主主義のどの機能がより重要性を持つのか、あるいは重要性を持たないのか。フィーロンの調査では、「あらゆる良きものは共通の傾向性を持つ」との発見があったが、中でも次の3つの特質が際立っている。

①「法の支配」(法的手続きの平等かつ公平な適用)、②「言論の自由と説明責任」(市民が政府の選択に参加しうる程度の表現、結社、報道の自由)、③「政府の能力」(公共サービスの質、公務員の質と独立性)、である。

これら3つの特質は、国民に対して政府がどのような貢献をなしているか、政治制度がどの程度強靭で合法的、かつ説明責任を果たしているかを示している。統治能力が改善されれば、その後の武力衝突リスクは低下していく傾向がある。

アメリカにおける統治能力の質は、ポリティ・インデックスによれば2016年、Ⅴ-Demでは2015年を境に低下している。その中でもはっきりした指標の1つは、アカウンタビリティ(説明責任)である。

中央選挙管理制度がないアメリカ

民主主義におけるアカウンタビリティの中心に自由選挙がある。他の多くの国々と異なり、アメリカには独立した中央集権的選挙管理制度が存在しない。ハーバード大学「選挙保全プロジェクト」創設者であり、選挙を専門とする政治学者ピッパ・ノリスによれば、移行期の新たな民主主義国家のほぼすべてが、選挙保全のために独立した中央選挙管理制度を創設しているという。選挙過程への信頼を構築するためである。

ウルグアイ、コスタリカ、韓国は、民主化に移行した際、すべて制度創設を行っている。オーストラリア、カナダ、インド、ナイジェリアなどの連邦制民主主義国の大国も、同様の方法による選挙管理体制が見られる。カナダにおいては、同国の選挙管理委員会が運営しており、有権者は居住地にかかわりなく同手続きに従うことになる。

同制度においては、投票用紙のデザイン、印刷、投票集計を、党派的政治の糸を引く余地もなく、正確かつ安全に遂行する手順が標準化されている。法的紛争が生じた場合も、裁判所による政治との嚙みしろなしに、処理可能である。

選挙保全プロジェクトでは、2019年報告で、各国の選挙法と選挙過程を調査し、2012~2018年のアメリカの選挙の質は、「他の歴史ある民主主義国、豊かな社会と比して低位にある」と指摘されている。同スコアはメキシコ、パナマ、さらには、コスタリカ、ウルグアイ、チリより相当に低位にあった。かくして、アメリカは有権者において不正疑惑は拡散されやすく、結果に対する疑念も持たれやすい。

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