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ゼネコン界に舞い降りた天使「奥村くみ」誕生秘話 奥村組社長は「建設バカ」シリーズを推していた

東洋経済オンライン / 2024年10月5日 8時0分

(撮影:今井康一)

「7年前の最終プレゼンテーションで私が推す別のCM案が採用されていたら、今多くの方からご支持をいただいている『奥村くみ』は生まれていなかった」。中堅ゼネコン、奥村組(大阪市)の奥村太加典(たかのり)社長はそう振り返る。

【画像で見る】テレビCMは2018年から放映を開始。当初は視聴者から「奥村くみは本当の社員ですか」という問い合わせが複数あった

奥村社長の言う奥村くみとは、2018年から放映しているテレビCM「建設LOVE!奥村くみ」シリーズのことだ。

人気俳優の森川葵さんが建築系の新入社員役を演じ、ドジを踏みながら成長していくストーリー。「本当に建設現場にいそう」――。複数のゼネコン関係者は、森川さんの熱演に親近感を抱いた。一般的にも好感され、本シリーズは若い人から年配者まで幅広い層の支持を得ている。

「新3K+K」の採用は社長発

シリーズ7年目となる今年5月からは、「新3K+K」篇の放映を開始した。

大学のキャンパスを歩く1組の若い男女。「私、建設業界に入ろうかな」と話す女性の言葉に、新校舎の現場監督としてその近くにいた奥村くみは微笑む。

ところが、男性は「建設業って3K(きつい、汚い、危険)じゃん」とNGを出す。これを聞いた奥村くみは、ワープするかのような勢いで2人の間に割って入り、「適正な給与、十分な休暇、未来への希望。そしてカッコいい」と建設業界の「新3K+K」を力説し、ひとり満足げにうなずく。

この新シリーズで強調されている「新3K+K」は、ゼネコンの業界団体である日本建設業連合会が業界のイメージ向上を狙って2022年ごろから提唱している標語だ。そもそも新3Kは国土交通省が2015年に発表した「新3Kを実現するための直轄工事における取組」で用いられていた。

「建設業界をあげて標榜している新3K+Kを当社のCMに使わない手はない」と奥村社長。テレビCMを管轄する秘書広報部の井戸田高明氏は、「当初は違うテーマで企画を進めていたのだが、社長から突然メールが来て、今の内容(新3K+K)に変更した」と明かす。

建設業界におけるマーケティング戦略において、奥村くみシリーズはエポックとなった。かつて、清水建設など幾多のゼネコンがCMを展開してきたが、俳優を用いたものはほとんど例がなかった。

最近では大成建設のようにアニメーションを採用した柔らかいイメージを意識したCMがあるが、基本的にはインフラ構築の大切さや会社の経営方針を打ち出した「実直」「重厚」な内容が多い。

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