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ゼネコン界に舞い降りた天使「奥村くみ」誕生秘話 奥村組社長は「建設バカ」シリーズを推していた

東洋経済オンライン / 2024年10月5日 8時0分

これに対して、奥村くみシリーズは俳優を使ったストーリー仕立てで、しかも思わずクスッとしてしまう笑いの要素も含まれている。これまでの建設業界にはなかった「軽快」な内容に、「あのCMはいいね」と多くのゼネコン関係者が賞賛する。

建設業界は長い間、構造的な問題に悩まされてきた。とくに最近は、2~3年前に激しい競争をして獲得した工事が進捗し、資材高も加わって低採算に苦慮している会社が多い。技術者の高齢化の進行に加えて若手の流入が少なく、慢性的な人手不足問題も横たわる。施工不良を受け、組み上がっていた鉄骨を解体して建て直す事件が発生するなど品質問題も後を絶たない。

このように暗い雲に覆われていた業界に、さわやかな新風を呼び込んだ人物こそ、人気キャラクターとして定着した奥村くみだ。奥村組のCMの成功を見たほかの大手ゼネコンが続々と追随。西松建設や戸田建設、熊谷組といった大手ゼネコンも俳優を起用したテレビCMを開始した。

こういったCMの連打は、業界のイメージ改善に一役買っている。実際、足元では建設業に就職する新卒学生の数が増えており、とくに「建設女子」と言われる女性の技術者が増加している。

お蔵入りした案の「建設バカ」

建設業界全体に活気をもたらしたわけだが、奥村社長によると「まったく違う別のシリーズが展開されていた可能性があった」という。

奥村組は、2017年の初めごろに大阪国際女子マラソンに協賛することを決めた。マラソンのテレビ中継番組には協賛社CM枠が設けられていた。そのため「当社として初となるCMをつくらないといけない」(奥村社長)。

2017年の半ば、制作サイドとの複数回のディスカッションを経て、広告代理店が最終プレゼンの場で提案した企画案は2つあった。1つが森川さんを起用する奥村くみシリーズ。もう1つは、奥村組の社員を主人公とする「建設バカ」シリーズというものだった。

同僚と居酒屋にいても彼女とデートしていても、建物のことが頭から離れない。周囲が「建設バカ」だと呆れられるほど建設が大好きなゼネコン社員。ときに周りが戸惑う行動をとってしまうことがある――。

これは結局お蔵入りすることになったが、経営陣にはむしろこちらが本命だった。奥村社長は吐露する。「私はむしろ、こちらの『建設バカ』シリーズを推していた。当社の社員に建設バカがいたら嬉しいと思った」。

10名ほどの社員が集まった最終プレゼンの場では、奥村社長はあえて先に自分の意見を言わずに、みんなの意見を募った。すると、若手や女性を中心に出席者の8割ほどが「奥村くみシリーズがいい」と推したのだった。

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