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父急死、母子家庭から私大医に進んだ彼女の顛末 『ブラック・ジャック』に憧れた結果とその費用

東洋経済オンライン / 2024年10月8日 10時0分

そんな中、杉村さんはブラック・ジャックになるため必死で勉強した結果、学年2位という成績で大学を卒業した。そんな彼女のために、学費免除でもあれば肩の荷が降りるわけだが、通っていた大学にそのような制度はなかった。

「昔はあったらしいのですが、『騙し合い』が勃発したらしいのです。ある人たちが『この問題は試験に出ると教授が言っていたぞ』という嘘を流して、それにみんなが翻弄されてしまう事件が起きたとか。大学側は可能な限り、通っている学生たちみんなに医師免許を取得してほしいのに、そんなことされたらたまったものではないですよね。そのせいで、学費免除はなくなり、学年5位以内に入っても2万円の図書券と表彰盾がもらえるくらいでした(笑)」

「見習い医師」として病棟の患者たちに対応

そして、大学を卒業後、今は1年目の初期研修医として、神奈川県内のとある大学病院で勤務している杉村さん。今は「見習い医師」として病棟の患者たちの「マイナートラブル」に対応しているという。

「『熱が出ました』や『頭が痛いです』という患者さんの話を聞いて解熱剤や頭痛薬などを処方したり、救急車が来たときに最初に診察して上級医に伝達したり、診療に必要な手技を練習し実践させてもらったり、といった具合です」

そして、気になる奨学金の返済だが、今月から始まった。

「1200万円を20年で返していくので、240回払いなんですよね。返済額は毎月5万円。『医者になるのだから、そこまで負担にならないのでは?』と思われるかもしれませんが、わたしの今の給料は基本給25万円に当直費などアレコレ手当が入って、手取りは22万〜28万円くらいです。ということは、社会人3年目の友達とそんなに変わらないんですよね」

いくら、医者といえども初任給はどの業界も低いもの。そこで、杉村さんは可能な限り、節約を心がけている。

「初期研修医になる前から、手取りが22万円程度になるのはわかっていたため、生活費をかけないように準備していました。例えば、初期研修医は寮に入れるのですが、光熱費込みで2万円です。普通に暮らそうと思うと、家賃は6万円くらいはかかりますよね。それが光熱費込みで2万円というのは『実質無料』という感覚です」

いくら研修医とはいえ、夢がなさすぎるのではないだろうか……? その一方で、街の病院に勤務すれば1年目でも、1カ月で手取り46万円もらえることもあるという。ただ、教育機関として医学教育を行う大学病院でしっかり学んだほうが実力のある医師になれると考えたこと、専門医の資格を取得するためには大学病院での研修が必要になることなど、将来を考えて大学病院で勤務することに決めたそうだ。

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