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アサヒ「キンプリいじり」便乗は何がマズかったか 企業がSNSで活用する"ネットミーム"の落とし穴

東洋経済オンライン / 2024年10月8日 10時0分

1:利用すること自体が「商業主義」「金儲けのため」と見なされかねない

2:文脈を十分に理解して行わないと、人を傷つけたり、差別をしたりする可能性がある

LGBTQ+の人たちへの差別と誤解されるリスク

例を挙げよう。

ゲリラ豪雨が起きた際に、それを文字って、SNSに「ゴリラゲイ雨」という投稿をする人がよく見られるようになった。

2022年に東急ハンズが公式Twitter(現X)アカウントから、このネタで投稿した。本件も「同性愛者への差別だ」という批判が起きて炎上し、東急ストアは投稿を削除し、謝罪をした。

個人であれば許容される投稿でも、企業が行うと問題視されることは多々ある。

同年の10月11日の「国際カミングアウトデー」において、花王、自衛隊、宅配すしチェーン「銀のさら」が公式SNSアカウントで行った投稿が批判を集めた。

この日は、LGBTQ+の人たちが、自らの性的指向をカミングアウト(開示)することを推奨する日でもある。これに便乗して、各組織のアカウントが、あまり知られていない組織の裏ネタを「カミングアウト」したのだった。

別の日に、普通に投稿をすれば問題はなかったのだが、カミングアウトデーに便乗して投稿してしまったことが「性差別」「LGBTQ+へのリスペクトが足りない」批判をされたのだった。

アサヒビールの件に戻ると、筆者はこの“炎上”が起きたときに意外に思えた。大手の飲料メーカー・酒類メーカーの多くは、何度か“炎上”を起こしているが、アサヒビールはあまり炎上を起こさない企業だ。

2021年の東京五輪・パラリンピックの際に、ゴールドパートナーでもある同社が会場で酒類を提供することに対して批判が殺到し、提供停止を決定するという事態が起きた。ただし、これはアサヒビールというよりは、五輪組織委員会の決定の問題であり、同社が起こした不祥事とも言いがたい。

アサヒビールは、広告・宣伝に関しては、よく言えば慎重、悪く言えば保守的な企業であるように思う。だからこそ、これまで大きな炎上は避けられてきたとも言える。

今回の場合は、参照されたキンプリの投稿が「知る人ぞ知る」レベルの事例だったがゆえに、社内のチェック機能が働かなかったのかもしれない。

成功した「日清食品」と「シャープ」

一方で、インターネットミームを巧みに活用して成功している事例もある。例えば、日清食品は、話題化している「強風オールバック」の楽曲・動画とコラボしたCMを制作して話題化に成功している

先に述べたシャープの公式Xアカウントも、「名探偵コナン」の事例に限らず、トレンド化しているネタをうまく取り入れた情報発信をして大きな効果を上げている。

もっともシャープの場合、つい最近(10月2日)、公式Xアカウントの「中の人」である山本隆博氏が退職することが公表された。山本氏は「外の人」として継続的にアカウント運用に携わるとされている。

SNSの運用や、SNSで話題化するような広告・宣伝の企画は、「職人芸的」のようなところがあり、誰でもできるものでもなければ、一朝一夕でできるものでもない。企業もSNS運用が当たり前の時代になってきているものの、人材の確保、人材育成にはまだまだ多くの課題が残されている。

西山 守: マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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