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ニュース報道の現場から伝える「気候変動問題」 求められる「提案型ジャーナリズム」

東洋経済オンライン / 2024年10月9日 16時40分

実際に気象庁のデータでも、80ミリ以上の猛烈な雨の降る回数は40年ほど前に比べておよそ1.7倍に増えています。日本でも確実に雨の降り方が変わり、これまで崩れなかった山が崩れ、川が氾濫するようになったのです。こうした極端な豪雨災害に気候変動が影響していることは、イベント・アトリビューションというコンピュータ・シミュレーション技術により次々と解明されています。

このような気候変動を一因とする災害に対して、被害や現状を伝え、どのように避難するかなど、「適応策」を伝えることはメディアとしての大事な役割です。しかし、それだけではなく、気候変動への根本的な対策、いかにして大元のCO2を減らすのかという「緩和策」をきちんと提示することも、メディアの使命ではないでしょうか。

私がこれまで各地を取材して確信したのは、日本にはCO2削減に貢献する再生可能エネルギーのポテンシャルが十分にあるということです。実際に環境省も全発電量の約2倍の再エネポテンシャルがあると試算しています。その資源は、自然豊かな地方に大量に眠っているのです。

ただし、メガソーラーの乱開発など、都会の大企業が住民の頭越しに地域の自然を破壊することはあってはなりません。大切なことは、地域の人々が主体となって取り組み、地域や自然と共生する形で再エネ導入を実現することなのです。

地域の挑戦は始まっている

再エネ資源を生かした地域の挑戦は各地で始まっています。荒廃した森林の整備で生まれる端材を燃料とした木質バイオマス発電に取り組む岡山県真庭市、地域を流れる豊かな川の水を利用した小水力発電導入によって若い移住者の聖地になった岐阜県郡上市石徹白集落、温泉の余った熱を利用することで通常の地熱発電よりも低い温度の熱で発電できる地熱バイナリー発電に成功した福島県福島市土湯温泉町など、私は地域の人々が主体となって再エネを開発していく姿を取材してきました。

また、世界6位の広大な面積の海を持つ海洋国家である日本では、洋上風力にも注目が集まっています。長崎県五島市は、海に浮かべる浮体式洋上風力発電を地域の人々が主体となって誘致し、2016年からは商用運転が続けられています。

再エネを生かすことで、地域でエネルギーの地産地消ができれば、化石燃料の購入により域外に流出していたお金の流れを変えることができます。円安の影響もあり、日本全体の化石燃料購入代金は35兆円を超えました(この内、火力発電の燃料費は約12.5兆円。2022年度)。再エネを導入し、エネルギー自給率を高めることは、「地方創生」を後押しするだけでなく、日本全体の経済成長にも貢献するはずです。

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