「死の疑似体験」で彼女が気づいた"母子の呪縛" 「手放す」ことではじめて実感できる関係もある
東洋経済オンライン / 2024年10月14日 19時0分
「普段、生きているときには『あれがない、これが足りない、なんとかして手に入れなければ』と、日々なにかを求めて生きています。しかし、立ち止まってじっくりと考えてみると、すでに多くの大切なものを得ていたことに気づくのです」。私たち人間の本性についてこう諭す、浄土真宗・倶生山 慈陽院 なごみ庵住職の浦上哲也氏は、同時に「大切にしているものを『手放す』ことで『死』が実感される」ともいいます。
そんな浦上氏が主宰する「死の体験旅行」というワークショップで、大切なモノ・コトを手放す「疑似体験」をした人々に起こった変化とは。
※本稿は、浦上氏の著書『もし明日が来ないとしたら、私はなにを後悔するだろう?』から、一部を抜粋・編集してお届けします。
大切なモノ・コトを手放す「死の体験旅行」
私が住職をつとめるなごみ庵が開所したのは、2006年のこと。その13年後の2019年5月7日には、全国で令和初の宗教法人に認可されました。ですから、なごみ庵は日本のお寺のなかでもかなり新しい、芽吹いたばかりの小さなお寺と言えるでしょう。
【図】「死の体験旅行」では、このシートに大切なモノ・コトを書き出す
私はこのなごみ庵で「死の体験旅行」というワークショップを開催していますが、まずはじめに、どういったものなのかを説明いたします。
まず参加者は、自分のまわりにある大切なヒト(人物)、モノ(所有物)、コト(思い出)、ユメ(行為、目標)をカードに書き出すところからはじまります。
※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください
大切な人からもらった物や思い出が詰まった記念の品といった形あるモノだけでなく、旅先で見た美しい光景だったり、故郷の風景を思い描く方もいるでしょうし、自分の人生において成し遂げたいと心に秘めている夢や目標がわき出してくる方もいらっしゃるでしょう。
大切なモノ・コトをカードに書き出すのは準備段階にすぎないのですが、ここですでに大事な気づきを得る方も少なくありません。それは、自分はこんなにも多くの大切なモノやコトに囲まれていたのか、という気づきです。
普段、生きているときには「あれがない、これが足りない、なんとかして手に入れなければ」と、日々なにかを求めて生きています。しかし、立ち止まってじっくりと考えてみると、すでに多くの大切なものを得ていたことに気づくのです。
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