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デジタルメディアは発達障害の原因になるのか 「デジタルがいい悪い」議論より重要なことは?

東洋経済オンライン / 2024年10月15日 19時0分

教育や子育ての世界において、いつの時代も新しいものは「悪」とされます(写真:Ushico/PIXTA)

発達障害の原因として、デジタルメディアが挙げられることがあります。しかし、発達障害がある子どもの指導を専門とする立命館大学の川﨑聡大教授は、科学的根拠はないと指摘します。川﨑教授の新刊『発達障害の子どもに伝わることば』から抜粋し、デジタルメディアとの付き合い方について解説します。

テレビ、スマホ、ゲームで発達障害になる?

「テレビやスマホ、タブレットの使いすぎで発達障害が起きる」といった短絡的な都市伝説は早くなくなってほしいと願ってやみません。テレビやスマホといった特定の刺激が発達障害を引き起こすエビデンスはありません。発達障害の特性とデジタルメディアの相性やハマりやすさは別の話です。

以前、とある医学系学会が、過剰なテレビの視聴がASD(自閉症スペクトラム障害)を引き起こすといった趣旨の声明を出して大混乱になったことがありました。その声明はすぐに取り消されたのですが、ちょうどそのころ私のところにひとりの保護者がやってきて、涙を流しながら次のことを語ってくださいました。

その方は、この都市伝説に基づいた診療を受けたあと、1年間子どもにテレビをまったく見せなかったそうです。テレビだけでなく、できる限りデジタル系のおもちゃからも遠ざけたそうでした。そして1年後の診察で「1年間テレビを見せなくて症状が一切軽くなっていないのは、あなたの子育てがよろしくないとしか言いようがない」といった趣旨の発言を受けたそうです。本当に不幸な話です。

たしかに発達障害特性のある子どものメディアスクリーンの視聴時間(テレビだけでなくスマホやパソコンなどの視聴時間をすべて合わせたもの)は、典型発達の子どもに比べて長い傾向にありますが、それがASDをはじめ発達障害を引き起こしたというエビデンスは現時点でありません。

「とりあえず禁止する」ことによって出てくる弊害

教育や子育ての世界において、いつの時代も新しいものは「悪」とされます。漫画しかりテレビしかりアニメしかりゲームしかりスマホしかり……。

端的に申し上げると、「上手な付き合い方」を学習すればいいだけです。とりあえず禁止する、といったやり方だと子どもはそこで新しいルールを学習することもできませんし、同年代の子どもたちとのコミュニケーションのネタがどんどん枯渇していきます。

おそらく親とのコミュニケーションも希薄になっていくでしょう。自分の趣味や興味を頭ごなしに否定する大人と子どもたちが話をしたいと思いますか?

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