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資本主義は今、曲がり角に来ているのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(1)

東洋経済オンライン / 2024年10月18日 12時0分

ドイツ・ボン大学のマルクス・ガブリエル教授は、社会主義や共産主義に進むのではなく、資本主義を再定義すべきだと論じている(写真:ELUTAS/PIXTA)

企業経営の分野で「エシックス(倫理)」が注目されている。日本を代表する企業のアドバイザーを長く務めてきた名和高司氏。3年前に「パーパス経営」を提唱し、日本でのブームの火付け役となってきた。

しかし、今やパーパスの実践に行き詰まる企業も数多い。その解決策として、経営において倫理を判断軸に据えるとする『エシックス経営』を提唱している。

また、「哲学界のロックスター」と称されるドイツ・ボン大学のマルクス・ガブリエル教授は、道徳的価値と経済的価値を再統合した「倫理資本主義」を提唱し、日本に向けて書き下ろした近著『倫理資本主義の時代』が大きな話題となっている。

今回、ガブリエル教授の来日に合わせ、日独の「倫理資本主義」について、大いに語り尽くしてもらった(全4回を予定)。

資本主義の3つの条件とは

名和:ガブリエルさんは「倫理資本主義」という概念を説いてこられました。環境問題や不平等社会などが浮き彫りになる中、資本主義の終焉を唱える論調が台頭しています。

【写真】理想と現実をつなぐ判断軸は「倫理」にある

それに対して、ガブリエルさんは社会主義や共産主義に進むのではなく、資本主義を再定義すべきだと論じていますが、最初に資本主義の本質をどう捉えているのかを教えてください。

ガブリエル:資本主義は3つの条件を緩やかに束ねたものとして定義できます。

第1の条件は「自由契約」です。封建制度と違って、自分の労働力や能力が金銭的対価の対象となり、それを収益化するときも束縛を受けずに契約を結ぶことができます。自由契約は、支配と不正からの解放における近代的形態として資本主義をもたらしました。

第2の条件は「生産手段の私有」です。誰かが何かを所有し、リスクをとるなど何らかの条件下で再投資し、より多くの私有財産を蓄積することができます。私有財産は体系的かつ合理的に経済を進める単なる条件ですが、システムに安定性をもたらします。今日まで、不動産が資本主義の特徴として重視されてきたのはそのためです。

第3の条件は「自由市場」です。共産主義下の計画経済や戦時下の経済では、市場はコントロール可能で、そうすべきだと考えます。資本はそのような特殊な手段ではないし、人間は自由なので、市場はコントロールしてはいけません。

この3条件は、イギリスの産業革命、フランス革命、資本主義的銀行とされるイングランド銀行など、歴史の偶然が重なって生まれたものです。誰かが資本主義を発明して実践したのではありません。誰も計画しなかったことが重要なのです。

知的改革が推し進めるデジタル資本主義

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