"日本で最も消滅が近い村"で目撃した過疎の実態 高齢化率7割の群馬県南牧村が抱く苦悩と希望
東洋経済オンライン / 2024年10月18日 8時0分
村には長期入所50人を定員とする「さわやかホーム」(1995年開設)も存在するが、高齢化が進む中で新たな老人ホームが必要とされていた。市川さんは「ここは、村にいる人のために作られた施設なんです。施設を運用することで職員が増え、村外の人が勤めたり、自分のように外から出戻ってきたりした人もいる」と説明する。かのかといこいでは35人程の職員が働いており、地域の有力な雇用創出先にもなっている。
市川さんは、NPOの一員として「地方創生」にも取り組む。10月1日に発足した石破茂新政権では、初代地方創生担当相も務めた石破首相の下、地方創生が肝煎り政策の1つになりそうだ。10月11日には自身が本部長を務める「新しい地方経済・生活環境創生本部」を設置。今後10年間で取り組む地方創生の基本的な考え方を年内にまとめる方針だ。
国内で最も過疎が進む地域は今、どのような課題に直面するのか。市川さんに、これから故郷の再生に何が必要かを尋ねると、「村とお金を稼ぐ手段が切り離されている。もう正直、どうしようもないと思うんですよね……」と言葉を詰まらせた。将来も村に残るかどうかについては、「戻ったときは親が亡くなったら出ていこうと思っていたが、こういう立場になったので、そのときにならないとわからない」。
夫婦で喫茶店運営する30代の移住者
市川さんから、地域おこし協力隊員を経て、村に移住した人がいると聞いた。施設の近くに建つ「村の喫茶店もくもく」という真新しい喫茶店に移動すると、傍でコーヒー豆を焙煎している男性を見つけた。奈良県生駒市出身の鰐渕元貴さん(31)だ。
2019年に協力隊員になってから夫婦で喫茶店運営を開始し、2022年に協力隊を卒業後も定住している。店は土日月の営業で、村外から訪れる客も多いという。鰐渕さんは「隊員募集の自由度が高く、(村側が)この喫茶店の建物を建て、運営する人を募集するタイミングだったので、南牧村でやってみようと思った」と振り返る。
地域おこし協力隊は、都市部から過疎地に移住した隊員が、地場産品の開発や農林水産業などに従事しながら、その地域への定住や定着を図る取り組みだ。2009年度から開始し、各自治体が隊員を任期付きの公務員として雇うなどしたうえで、活動経費などの一部を国が助成している。
鰐渕さんは「これまでの村の隊員は10人ほどだろうか。非常によい制度で、なければ私もこの村に来ることはなかった」と説明する。「地域のつながりが多く、人がいいのが一番」と村の魅力を語り、今後も住み続けるという鰐渕さんの存在は、村の移住促進政策が成功したケースと言えそうだ。
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