1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

"日本で最も消滅が近い村"で目撃した過疎の実態 高齢化率7割の群馬県南牧村が抱く苦悩と希望

東洋経済オンライン / 2024年10月18日 8時0分

一方で合併しなかったぶん、高齢化率が他自治体よりも相対的に高まったとの見方もできる。当時編入合併された過疎地はその後、合併しなかった自治体に比べて人口減少が進む傾向にあったとも指摘されている。合併後に地域間の学校が統廃合し、役場も廃止されることで、地域の雇用が一気に萎んだからだ。

いったん「自治体」という立場を失うと、「周縁部」としてその存在は見えづらくなる。結果的に、南牧村が合併して「下仁田町南牧」になったほうが幸福だったかはわからない。

就任早々に「ワースト1位」と名指し

長谷川村長が就任したのは、2014年春だった。その後10年間は、国が推進した「地域創生」の時代と重なっている。就任からわずか約1週間後、「消滅可能性自治体」のワースト1位として名前が上がり、「びっくりはしないけど、『どうせ消滅しちゃうんだから』と諦めムードに拍車をかけてしまうようで残念だった」(長谷川村長)。

その後、国は自治体の地方創生を支援する交付金制度なども創設した。自治体が主体的に行う取り組みを国が後押しする立て付けで、村は交付金も活用し、移住者を増やす取り組みを進めた。長谷川村長は「大変な地方でも、若干かもしれないが創生のチャンスが出てきたのはよかった」と振り返る。

結果的に、現在は村外からの移住世帯が毎年数世帯誕生し、ゼロの年もあった出生数は年2~3人に回復したという。

毎年60人程度が亡くなる南牧村でこの先人口減からの反転は考えにくいが、若年層の人口規模が極めて小さいぶん、こうした流入を地道に繰り返せば、15年後に人口は現在の半分程度の700~800人で安定すると見込む。「最近移住した2人の女性がともに外で男性を見つけて結婚し、村で子どもが生まれている。微々たる数だが、少し明かりが見えてきた」(長谷川村長)。

とはいえ足元の人口減は止まらず、高齢者を支える行政サービスや人材を確保し続けられるか、課題は深刻さを増す。過去15年ほどで、村役場の正式な新卒採用はゼロ。かのかのような老人ホームも将来的な働き手不足が想定され、外国人労働者の雇用が求められる可能性もある。

地域社会そのものの存続も脅かされつつある。南牧村は小規模な行政区単位で自治が運営されているが、少し前まで60あった分区は、人口減や統合でいくつかなくなり、現在は55に減ったという。分区長を担える村民がいない集落もあり、長谷川村長は「区がないと祭り1つも行えない。コミュニティ崩壊が起き始めている」と将来を危惧する。

「ここもそのうち消滅する」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください