"日本で最も消滅が近い村"で目撃した過疎の実態 高齢化率7割の群馬県南牧村が抱く苦悩と希望
東洋経済オンライン / 2024年10月18日 8時0分
気が付くと、長谷川村長と面会して2時間半が経っていた。村役場を出た後、消滅したという「大入道区」に向かった。
村の奥へと入る県道から離れ、うねるような小道に入り、急峻な山道を登る。路傍にいくつかの建物が点在していたが、人の気配はなく廃墟と化し、放置され錆びついた車が目に入った。坂を上りきると、途切れた道の先に空き家が1軒。携帯電話に目を移すと、電波のアンテナが1本しか立っていなかった。
近接する「大倉区」でも、空き家が目立った。住民の黒澤義明さん(72)は、「大入道は何年か前に消滅したが、大倉区も人が減っている。去年、この家の旦那が亡くなり、角の家の人も亡くなったから、男はこの中で俺1人だけ。8軒あるが、ほとんど女性の1人暮らしだ」と集落を見渡す。女性の単身入居者が多いという話を聞いた、かのかでの記憶が甦った。
黒澤さんは昨年まで群馬県安中市の会社で働き、過去にこんにゃく芋農家を営んでいた実家に住む。「ウチは親父がいなくて、お袋がひとり、こんなところで農業をやっていたんで、しょうがないから村に残って手伝ったが、百姓じゃ食べていけないからやめてしまった」
2人の子どもはいずれも離村し、孫とともに時折訪れてくれるのが楽しみという。車で村外に買い物や通院に出かけ、生活に不便は感じていないが、「今は大丈夫だけど、車に乗れなくなったら大変になる」と黒澤さん。「ここもそのうち、消滅しちゃうんじゃないかと思うよね」と寂しそうに笑った。
集落が消えゆく中、外からの移住者に小さな希望を見いだす――。「日本一高齢化が進む村」が直面する現状は、日本各地の過疎地で起きているはずだ。これから国は10年先の「地方創生」の姿をどう描くのか。地方の実情を踏まえた丁寧な議論が今、求められている。
茶山 瞭:東洋経済 記者
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