国の経済発展をもたらすのは「政治制度」ではない 「ノーベル経済学賞」のアセモグル教授らに反論
東洋経済オンライン / 2024年10月19日 8時30分
すばらしいのは⑤で、これに対応できる余裕が、この組織(企業にせよ政府系にせよ)にあることが重要である。それは、ボスの度量かもしれないし、その組織の文化かもしれないし、その組織の仕組みによるかもしれない。
⑥はアメイジングだ。全社で対応しなければいけないし、駅間のチームワークも重要だ。DX(デジタルトランスフォーメーション)で、情報だけは飛ばせるかもしれないが、その見込み時間どおりに地下鉄が着かないと、駅員は待ちぼうけを食うことになるし、電車がついてから対応を始めれば、この地下鉄は発車が遅れてしまう。
⑦は個人の性質にもよるが、社会、コミュニティの雰囲気による。ラッシュが続く新宿区では難しいかもしれないが、それほど混んでない郊外の地下鉄なら簡単かもしれない。さらに、その組織がどこまで時間の余裕を駅員に持たせているかも重要だ。東京メトロが10月23日に上場したら、株主が「1分でも金にならない時間は使うな!」と株主総会では表立って言えないが、内内に訪問して圧力をかけるかもしれない。⑧は、まさにチームワーク、組織文化、そして社会の総力戦である。
「今ある社会資本」を守り、育てていくことが重要
これでわかるのは以下の4つである。第1に、社会資本にはいろいろな種類がある。第2に、それは意図的に作り出すのは難しそうで、市場メカニズムからは生まれにくいと見込まれる。
第3に、それは社会毎に異なる、さらに同じ国でも部分により異なり、階級ごとあるいは所得階層ごとに異なるコミュニティが成立していれば、そのコミュニティごとに異なり、また同じ国でも時代により異なり、数十年いや10年でも、急速に失われる場合がある。そして第4に、その一方で、ゼロから作るのは難しく、また失われたものを取り戻すのも難しく、今あるものを大事に守っていく、育てていくしかない、ということだ。
経済学の泰斗であった宇沢弘文・東京大学名誉教授によれば、彼が言う社会的共通資本とは、自然環境、社会的インフラ、そして制度資本の3つとされる。
ただ、自然環境と社会インフラはこれまでの経済学やそのほかのところでも十分議論されているし、3つ目の制度資本の議論は重要だが、宇沢氏が例として挙げる医療制度や教育制度は、それぞれの社会の価値観に基づき、工夫して試行錯誤して作っていくしかない、と私は思うから、この三類型以外の社会資本が重要だと考える。
「株式会社の利益最大化」とは矛盾しないのか?
この記事に関連するニュース
-
資本主義は今、曲がり角に来ているのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(1)
東洋経済オンライン / 2024年10月18日 12時0分
-
ノーベル経済学賞にMIT・シカゴ大の教授3人、「民主主義など社会制度が経済反転に重要」実証
読売新聞 / 2024年10月15日 11時26分
-
ノーベル賞に米大教授3氏 経済学、国家間の格差研究
共同通信 / 2024年10月14日 21時49分
-
石破政権の誕生は「日本経済正常化」の第一段階だ 真の経済発展政策「社会資本・主義」が始まる
東洋経済オンライン / 2024年10月5日 9時30分
-
今よみがえる伝説の経済学者「宇沢弘文」の思想 21世紀の経済学者の課題「社会的共通資本」とは
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 8時0分
ランキング
-
1フリーランス保護新法は認知不足 7割超が知らない、公取委調査
共同通信 / 2024年10月18日 16時19分
-
2『週刊少年ジャンプ』から大ヒット作が生まれる理由
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月19日 8時10分
-
3デニーズの「682円朝食」大激変に正直ビビった朝 メニューのリニューアルで、選択肢がグッと増加
東洋経済オンライン / 2024年10月19日 8時40分
-
4中古のタワーマンションの購入を検討中です。立地がいいマンションなので、修繕積立をして今後もきれいな状態を保てば価値は下がりませんか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月18日 6時0分
-
5同じJRで「特急」vs「高速バス」なぜ完全競合!? 四国で繰り広げられる“戦い”の理由とは
乗りものニュース / 2024年10月19日 9時42分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください