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ペットを「おくりびと」に託した飼い主の深い愛情 「コスメティック剖検」が必要とされている理由

東洋経済オンライン / 2024年10月20日 8時0分

大事なペットが死んだとき、その死因を知るだけじゃなく、“コスメティック剖検”をお願いしたい――今回はそんなお話です(写真:飼い主さん提供)

「おくりびと」という映画があります。

本木雅弘さんが演じた「納棺師(のうかんし)」は、亡くなった人を棺に納めるにあたり、遺体に化粧などを施して美しく整え、ときには全身の清拭を施して遺族にお返しすることを仕事とする専門職です。

納棺師――おくりびとは人間を対象としていますが、最近は、動物の病気の診断を行うぼくのような獣医病理医も「おくりびと」のようなことをしていることをご存じでしょうか?

「飼っているラットが亡くなったとき、死因を調べてもらいたいのです。“コスメティック剖検(ぼうけん)”ができるなら、ぜひお願いしたいのですが……」

【写真で見る】飼い主が獣医病理医に「コスメティック剖検」を依頼したファンシーラットのかしわちゃん

推定2歳のファンシーラットの飼い主さんから、このような相談を受けました。ファンシーラットというのは家畜化されたドブネズミです。

肺炎の影らしきものが見つかった

ドブネズミと聞くと「不衛生」「凶暴」「害獣」といったネガティブな印象を持つ人もいるかもしれません。しかし、野生のドブネズミとは異なり、管理された環境で交配して生まれるファンシーラットは、通常、人に病気を発症させるような病原体を持っておらず、性格は穏やかで飼い主によく懐きます。さらに、色や模様などのバリエーションも豊富で、近年めきめきと人気が上がってきているペットの1種です。

飼い主さんによると、このラットはあるときから呼吸が荒くなり、動物病院にかかったところ、肺のレントゲン検査で肺炎と思われる影が見つかったとのことでした。ラットの寿命は2~3.5年で、一般的に高齢になると肺炎を起こしやすくなることが知られています。

【写真で見る(8枚)】飼い主さんが筆者にコスメティック剖検を依頼した、ファンシーラットのかしわちゃん

体調が悪くなる数カ月前には、左後ろ足にできたしこりの切除手術を行ったといいます。

その後、元気がなくなり、動物病院で肺炎の治療を続けていましたが、いよいよ体調が悪そうにしているので、「もし亡くなってしまった場合は死因を調べてほしい」ということでした。

相談のメールには飼育状況や日々の様子、これまでの病歴などが詳細に記されており、飼い主さんがラットを大切に飼育していることがよくわかりました。

「コスメティック剖検」って何?

依頼には「コスメティック剖検で」という条件が付されていました。

聞き慣れない言葉だと思います。獣医病理医が亡くなった動物の死因を解明するために行う解剖を「病理解剖」と呼び、これを剖検ともいいます。解剖ですから、必然的に遺体をメスで切り開き、臓器や組織を取り出して観察することになります。

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