ペットを「おくりびと」に託した飼い主の深い愛情 「コスメティック剖検」が必要とされている理由
東洋経済オンライン / 2024年10月20日 8時0分
そのため、個人から病理解剖の依頼があったとき、ぼくは飼い主さんに遺体と一晩過ごしてもらい、気持ちを整理したうえで改めて病理解剖を行うかどうかの決断していただくようにしています。
ほどなくして、ラットは亡くなり、ぼくのところに遺体が届きました。「この子を病理解剖に出すことで、いつかラットの肺炎などを治せるようになるとよいなと考えています」とのことでした。
遺体に手を合わせた後、慎重に解剖を始めます。体毛はそのまま。切開部位は後できれいに縫合できるよう、できるだけ小さく、切開はていねいに。骨や神経などの組織に異常は見られなかったので、できるだけそのまま体の中に残します。
組織の採取が終わった後、傷口はきれいに縫合し、全身を清潔にして整えます。「病理解剖後、元気だった頃の姿で飼い主さんに遺体をお戻しする」ということを目指します。
死亡したラットの「本当の死因」
解剖後しばらく経ってから、さらに顕微鏡で詳しく観察し、病理診断の結果が出ました。動物病院で言われたような肺炎は見つかりませんでした。代わりに肺にリンパ腫が見つかりました。
リンパ腫というのは、簡単にいえば血液の細胞に由来するがんです。また、左後ろ足に見られたしこりは、免疫に関連する細胞に由来する組織球肉腫という種類のがんで、ほかに心臓、膵臓、膀胱、精巣、副生殖腺、眼球、皮膚などの組織にも同様のがん細胞が見つかりました。
つまり、このラットは、当初考えられていたような肺炎ではなく、免疫細胞の一種に由来するがんに全身が冒されたことに加え、肺でリンパ腫を併発し、その末期に呼吸不全となって亡くなったのです。
それが、病理解剖が明らかにした死の真相でした。
高齢のラットにおいてがんを予防することは困難です。ラットは、全身にがんが広がるまでよくがんばって生き抜いたのだといえます。
きれいに修復したラットの遺体に、ささやかではありますがお花を添えて、病理診断の結果とともに飼い主さんにお戻ししました。すると、次のようなメッセージが返ってきました。
「病理解剖をしなければ知り得なかった情報がたくさんあり、大変勉強になりました。ケージの掃除が不十分で肺炎になったのではないかと気に病んでいたので、本当の病気がわかり、気持ちが楽にもなりました。今後もラットを飼育していくつもりです」
動物は人間のようにしゃべりませんから、自らの体に不調があってもそれを訴えることができません。しかし、亡くなった動物の遺体には、病気との戦いの記録が病変という形で刻まれています。
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