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木村石鹸「非効率な」固形石鹸づくり再開の物語 一度やめたものを復活させるのは大変だった

東洋経済オンライン / 2024年10月23日 10時20分

このときは、固形石鹸の製造はそこまで大変ではないだろうと踏んでいました。手作業にはなるけれど、製造場所さえなんとかなればつくれるだろうと思っていたのです。

趣味で固形石鹸をつくられている方はたくさんいらっしゃいます。数人の工房とかで、手づくり固形石鹸を製造販売しているところも全国にいくつもあります。

僕らは固形石鹸はやっていなかったものの、釜焚き製法での石鹸づくりをずっと続けています。液体の石鹸も粉末の石鹸もつくっています。石鹸についての知見もちゃんとある。いわばプロです。固形石鹸も本気でやろうと思えば、すぐにできるはず、と考えていたのです。

しかし、やってみると失敗の連続。まさかこんなに時間と労力がかかるとは思いませんでした。

何もかもゼロからだったので、製造に必要な器具もオリジナルで開発し、処方(油脂の選定や配合比率)も何度も製造してはテストを繰り返して形にしていきました。

気づいたら固形石鹸を復活させようと決断してから、7年の歳月が経ち……。こんなに大変だとわかっていたら、固形石鹸を復活させようなんて考えなかったかもしれません。

このゼロからの固形石鹸づくりを通じて気づいたのは、「一度やめてしまったものを復活させるのは、そう簡単なことではない」というあたりまえの事実でした。

木村石鹸では、創業当時から続けている「釜焚き製法」での液体石鹸製造や、粉末石鹸製造も行っています。この釜焚き製法は、昔ながらの石鹸製造方法。大きな釜で、油脂にアルカリ剤を混ぜ、熱を加えることで反応させて石鹸にしていきます。

液体の場合で5〜8時間ぐらい。粉末石鹸にいたっては一日かけてつくったフレーク状の石鹸を4〜5日間乾燥させ、水分を飛ばします。その後、何度か細かく粉砕し、最終的にパウダー状の粉末石鹸に仕上げます。

製造開始から粉末石鹸完成までにかかる日数は、ほぼ1週間。このようにして製造した液体、粉末、それぞれの石鹸を原料として、さまざまな製品に配合しています。

釜焚き製法で石鹸を製造している会社はどんどん減っています。釜焚きによる粉末石鹸をつくっているところは、もうほとんど残っていないのではないでしょうか。というのも、粉末石鹸は製造に時間がかかる割に単価が安く、効率を考えると、続けていくのが難しいのです。

現在、日本に流通する「石鹸」は、東南アジアで製造された石鹸の元のようなものを日本で加工して最終商品に仕上げているものが多いのです。東南アジアで製造された「石鹸」が品質的に悪いわけではありません。

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