1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

木村石鹸「非効率な」固形石鹸づくり再開の物語 一度やめたものを復活させるのは大変だった

東洋経済オンライン / 2024年10月23日 10時20分

ならば、続けられるなら、続けていくべきじゃないか。そんなふうに考えているのではないかなと思います。

僕自身は、少し前まで、ビジネスにおいて「続ける」ことを目的化するのは危険なのではないかと思っていました。「家業」「後継ぎ」みたいな考え方に苦しめられてきた反動もあったのだと思います。

ビジネスには、社会をよくするとか、人々の暮らしを豊かにするとか、何かしらの目標があり、その目標のために会社という組織がある。

だから、目標を達成したら、会社はなくなってもよい。それが、目標よりも、会社や事業を続けていくことが目的になってしまったら意味がないんじゃないか。そう考えてきました。

でも、木村石鹸に戻って釜焚き製法に触れたり、さまざまなモノづくりの現場を見たりして、考え方が180度変わりました。「続けることに価値はある」という考え方に。

いや、正確に言うなら「続けることに価値はある、としておきたい」と、思うようになりました。 「一度やめてしまったものを、復活させるのはそう簡単なことではない」からこそ、続けていかないといけない。続けていくことそのものにも価値があると思っておきたいのです。

「効率」の追求で社会は豊かになるのか?

ビジネスでは、何よりも「効率」という価値がものすごく強い。「続ける」という明確な意思がなければ、効率の追求により切られてしまうもの、やめざるを得ないものはたくさん出てきます。

そうやって効率を追求し、非効率なものを排除していった結果、それで実現される世界や社会が豊かだと言えるのか?

僕はどうも違う気がするのです。「固形石鹸」の復活は、どう考えても割に合わないし、非効率すぎます。固形石鹸を商品のラインナップに加えるだけなら、製造を請け負ってくれる会社にお願いするほうが圧倒的に楽です。

でも、それでは意味がない。今回は、すべてゼロから自前でやることにしました。そして、なんとか復活のスタートラインに立つことができた。しかし、ビジネスはこれから。せっかく復活させた固形石鹸。始めた以上は、どうにかして続けていきたいと思っています。

そのためには、ビジネスのバランスを取っていく必要があります。固形石鹸が爆発的に売れて、儲かる日はたぶんこない。でも、続けていけるレベルで収益バランスは取らないといけません。

それは「液体石鹸」や「粉末石鹸」も同じです。釜焚き製法を続けていくためには、ビジネスとしても成り立たせていく必要があります。続けることに価値があるからといって、ビジネスがまったく成立していなければ、さすがに続けていくことはできない。

非効率、でも大切なことを、大切にしながら、どうにかして、そのバランスを取っていく必要があるのです。

【写真】試行錯誤をして復活させた固形石鹸づくりの様子など(7枚)

木村 祥一郎:木村石鹸工業株式会社 代表取締役社長

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください