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倫理資本主義の下でビジネスは成り立つのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(2)

東洋経済オンライン / 2024年10月23日 10時40分

資本主義における倫理やモラルとは何か(画像:tadamichi/PIXTA)

企業経営の分野で「エシックス(倫理)」が注目されている。日本を代表する企業のアドバイザーを長く務めてきた名和高司氏。3年前に「パーパス経営」を提唱し、日本でのブームの火付け役となってきた。

しかし、今やパーパスの実践に行き詰まる企業も数多い。その解決策として、経営において倫理を判断軸に据えるとする『エシックス経営』を提唱している。

また、「哲学界のロックスター」と称されるドイツ・ボン大学のマルクス・ガブリエル教授は、道徳的価値と経済的価値を再統合した「倫理資本主義」を提唱し、日本に向けて書き下ろした近著『倫理資本主義の時代』が大きな話題となっている。

今回、ガブリエル教授の来日に合わせ、日独の「倫理資本主義」について、大いに語り尽くしてもらった。

倫理的な解決策を見つければ、金持ちになれる?

名和:前回、資本主義について説明していただきましたが、なぜその上に「倫理」をつける必要があるのでしょうか。資本主義における倫理やモラルとは何か。特にビジネスについて語るときに、なぜ倫理が関係してくるのでしょうか。

【写真】なぜ立派なパーパスを作っても実践できないのか? 判断軸は「倫理」にある!

ガブリエル:道徳的事実の範囲、性質、具体的構造を研究する学問として倫理を捉えたいと思っています。事実とは一般的に、意味のある問いに対する真の答えです。たとえば、「私たちは今、東京にいますか」は意味ある問いで、答えは「はい」。これは事実です。あるいは、「2+2は4か」。これも事実です。

道徳的事実とは、私たちは人間ですから、人間として為すべきことに関する事実を指します。私たちは生存し繁栄するために環境を保護し、私たちが属する生態系をよりよくする必要があります。また、私たちは互いに義務を負っていて、人間は集団として、力の及ぶ範囲内で、人間以外のものに対して義務を負っている。それも道徳的事実です。

このように考えていくと、道徳的事実から、人間がどのような条件下で豊かに生きられるかがわかってきます。豊かに生きられることがすべての人の利益になるのは明白です。

ここで経済とつながってきます。経済的な手段によって人間の置かれている状態が向上し、よりよく生きられるならば、より多くの持続可能な利益が得られます。倫理を本当に理解すれば、経済の本質がわかってきます。

どういうわけか、倫理や道徳が経済活動を制約するという昔ながらの考え方は、いまだにあります。市場は市場で、企業は企業で、本分を果たせという考えです。周辺には「あなたがすべきことには限界がある」という批評家のような人たちもいます。

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