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「奄美大島に移住」57歳の彼が進める"趣味の終活" ウミウシに魅了されて引っ越し、"終活"の背景

東洋経済オンライン / 2024年10月24日 11時30分

しかし、人生何が幸いするかわからない。今本さんを診察した奄美医療生協が運営する奄美中央病院の院長から職業を聞かれ、SEを辞めて奄美に来たと話したところ、病院のIT化構想を温めていた院長と話が弾み、「(就職の)面談受けてみる?」と言われたのだ。

「その後、面談を受けて就職が決まりました。後になってわかりましたが、島の求人状況は厳しいんです。自分の得意分野を活かせるような仕事は当時少なかったので幸運でした。痛風が起きたのは、後にも先にもこの1回だけです」

今本さんの職場の休みは月2回の土曜日と日曜・祝日。ウミウシを撮影するのはもっぱら休日だ。

ウミウシのシーズンである12〜6月には月3、4回、オフシーズンの夏は月1回ほど撮影に出かける。朝9時に自宅を出て、海に潜って90〜100分ほど撮影。14時ごろには帰宅して昼食兼夕食をとり、黒糖焼酎のソーダ割りを飲みながら、撮った写真を見てウミウシ撮影の余韻に浸る。

ただ、移住してからずっと同じペースで撮影できたわけではない。気分が乗らず、撮影に行かない時期もあった。ウミウシを通じて生まれた新たな人間関係や、ホームページ内の掲示板での不特定多数の人とのやりとりがストレスになったこともある。

「ウミウシに関することならと、頑張っていろいろ引き受けたこともありました。でも、考え直したんです。仕事では嫌なことがあっても折り合いをつけねばなりませんが、趣味で無理することはないと。そこで、何年か前に掲示板は閉じて、いまは撮影に専念しています」

2007年には今本さんの写真がプロのカメラマンの目に留まり、ウミウシ写真集『ウミウシ 不思議ないきもの』を上梓。その後も2冊、写真集を出した。

「最初の一冊が版を重ねたので、その印税を撮影機材のバージョンアップや予備機、ビデオ用撮影システムに充てることができました。総額100万円ぐらいでしょうか。水中撮影機材は高価なのでありがたかったですね。その機材を使って撮った動画がDVDとして販売もされました」

給料は下がったが、働きやすい環境

先に紹介したように、今本さんは奄美医療生協のSEとして働いている。病院や診療所、老健施設など組合の9事業所にある300台以上のパソコン、プリンターやネットワーク機器を1人で管理し、日常の修理やメンテナンスを担当している。小規模な臨床検査システムや診療支援システムの開発に取り組んだこともあった。

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