脱亜入欧に没頭し西欧を超えられなくなった日本 世界各国の歴史を無視し憎悪を向ける日本人の悪弊
東洋経済オンライン / 2024年10月27日 8時0分
21世紀現在、世界は混迷と不安のまっただ中にある。先行き不透明というところだろうか。それ以上に、これまでの価値観では対処しえなくなっている。歴史上の大きな転換期にいるのではないかと思われる。
18世紀、アジアが西欧列強の侵略の中で歴史の転換期を体験せざるをえなかったように、今、逆に西欧から再びアジアへの歴史の転換を迎えているのではないかと思われる。
歴史がアジアに向かっている
1840~1842年のアヘン戦争での清の敗北を伝え聞いた、日本若者たちは内心穏やかではなかったはずだ。歴史は、東から西へ動いている。ペリーが来航し、幕府の存在が希薄となったとき、若者たちは幕府の堅持、尊皇、攘夷、新政権樹立、そのいずれをとるかで大きく揺れ動いた。
その中でも機を見るに敏であった福澤諭吉は、西欧へと舵をとる。論語を捨て、オランダ語、さらに英語へとめまぐるしく変わっていく。咸臨丸に乗って世界を見てきたことで、西欧化は確信へと変わる。
しかし、福澤たちの選択は命がけの選択であったことは間違いない。福澤は倒幕ではなく、西欧の学問を学ぼうとしただけなのに危険がせまる。「福翁自伝」にはこう書いてある。
「外国の貿易をする商人さえ店を仕舞うと云うのであるから、まして外国の書を読んでヨーロッパの制度文物をそれこれと論ずるような者は、どうもあいつは不埒な奴じゃ、畢竟あいつらは虚言を吐いて世の中を瞞着する売国奴だと云うような評判がソロソロ行われてきて、それから浪士の鉾先が洋学者の方に向いてきた。是は恐れ入った話で、何も私共は罪をおかした覚えはない」(「福翁自伝」『福澤諭吉著作集』第12巻、慶應義塾大学出版会、2003年、172ページ)
幕末の勤王の志士しかりで、世界史の大きな変化を察知したものは、保守的な世間から売国奴呼ばわりされ、命を狙われるのである。だから、歴史の転換を納得していても、命を賭けてというのでは、おいそれとそれに与しがたいのだ。
私は西欧史、とりわけ思想史の研究者なので、西欧の文献を捨ててインドや中国、イランなどの文献を読むというのは、今さら簡単なことではない。
しかし、先日開催されたBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国)サミットを見ても、19世紀の西欧社会による支配が再びアジアの支配に移りつつあることは、否定しがたいであろう。
しかし中国やロシアに好感を示すと、福澤の時代同様、あらぬ疑いと誹謗中傷を受けることは必至である。それは、いまだそう見えない人士がこうした考えを売国奴と見るからである。その意味で幕末の若者は、当時のものから見て売国奴であったともいえるのだ。
西欧史がいかに世界の普遍的な歴史になったか
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