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日本企業は倫理資本主義を実践できるのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(3)

東洋経済オンライン / 2024年10月29日 10時30分

「日本には非常に知的なビジネスの世界があります。特に素晴らしいと思うのが、思考とビジネスが非常に興味深い形で絡み合っているところです」とドイツ・ボン大学のマルクス・ガブリエル教授(写真:metamorworks/PIXTA)

企業経営の分野で「エシックス(倫理)」が注目されている。日本を代表する企業のアドバイザーを長く務めてきた名和高司氏。3年前に「パーパス経営」を提唱し、日本でのブームの火付け役となってきた。

しかし、今やパーパスの実践に行き詰まる企業も数多い。その解決策として、経営において倫理を判断軸に据えるとする『エシックス経営』を提唱している。

また、「哲学界のロックスター」と称されるドイツ・ボン大学のマルクス・ガブリエル教授は、道徳的価値と経済的価値を再統合した「倫理資本主義」を提唱し、日本に向けて書き下ろした近著『倫理資本主義の時代』が大きな話題となっている。

今回、ガブリエル教授の来日に合わせ、日独の「倫理資本主義」について、大いに語り尽くしてもらった。

日本企業と倫理資本主義

名和:日本にはかつて、自己利益だけではなく、他の人の利益や幸せを尊重する利他主義の考え方がありました。

ところが、アングロサクソン型資本主義が押し寄せて、第2次世界大戦後、さらには「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称された絶頂期が終わった後に、アメリカから学ばなければならないと、株主資本主義を輸入してきました。これは日本の伝統的な価値観にまったく反するものでした。

ガブリエルさんは親日派です。日本は今、ビジネス面で非常にアメリカナイズされていますが、倫理資本主義について、日本企業との関連性をどのようにご覧になっていますか。

ガブリエル:日本は私のロールモデルとなりました。10年にわたってこれほど頻繁に日本を訪れていなかったなら、私は今のような倫理資本主義の擁護者になっていなかったと思います。

日本に必要なのはリノベーション

1990年代以降、経済ショックが起こり、日本はゆっくりと衰退しているという危機意識が広まっていますが、私は日本とその歴史を見る中で、倫理資本主義的であることは1つの選択肢だと確信しました。アングロサクソン流になろうとすれば、衰退につながります。

日本に必要なのは、リノベーション(刷新)です。リノベーションには常にイノベーションが伴います。現代科学の知見に照らして根本的に現代化することによって、伝統的な慣習による考え方を刷新するのです。

神道や仏教といった宗教をはじめとする知的伝統、ソフトパワーの強み、建築、美学、世界の人々が興味を持つ日本製品、日本企業が生産した製品でなくてもよいのですが、そうした日本らしい要素を活かしてみてはいかがでしょうか。現代の科学や哲学における最高の知的水準まで倫理観を刷新して、次のレベルに引き上げる。さらに、日本の老舗企業のようにいろいろなものと融合させるのです。

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