日本企業は倫理資本主義を実践できるのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(3)
東洋経済オンライン / 2024年10月29日 10時30分
これは大きなNATOをつくるといった地政学的な目的ではなく、現代資本主義を倫理的エンジンに変えるための経済的チームであり、そこに加わるよう、他の国を説得するのです。
その意味で、日本は絶好の場所だと思います。日本には非常に知的なビジネスの世界があります。特に素晴らしいと思うのが、思考とビジネスが非常に興味深い形で絡み合っているところです。非常に思慮深い経済学者もいます。だから、私は個人的に特に日本とドイツが協力することに大きな期待を寄せているのです。
政府にも果たすべき役割がある
名和:私は現在、京都先端科学大学のビジネススクールで教えていますが、京都は日本の知力の中心地だと思います。日立の東原敏昭会長やNTTの澤田純会長なども京都の大学をよく訪れ、京都は優秀な実務家と教育機関の集積地となっていますが、政府から離れています。政府も倫理資本主義において何らかの役割を果たすべきだと思いますか。
ガブリエル:もちろん、そこには政府も必要です。現実の倫理資本主義では、経済界は自ら組織化し、規制緩和の条件を整備する際に政府を支援します。そのためには新しいビジネスモデルが求められ、私たちが今行っていることを抜本的に改革しなくてはなりません。また、政府を説得し、民主的な行動領域に目を向けてもらいます。
なぜかというと、民主主義国家では、国民的議論、政党政治、議会政治などあらゆるものを通じて、民主主義のあり方、理想的には、等しく優れた選択肢の範囲を定義するからです。私たちは、邪悪な選択肢を除外し、良い選択肢の中から国民に決めてもらいたいと思っています。たとえば、拷問の導入は政治的な選択肢ではなく、除外すべきものです。
民主的な意思決定は構造化された場で行われます。 倫理資本主義がそうした場を形成するのであれば、政府はアップレギュレーションを通じてそれを支援できます。なぜなら、良い政府は良い法律をつくることに携わるからです。
政府の仕事は、法律を破壊したり、悪法を作ったりすることではありません。政府が良い法律を作るためには情報が必要です。政策立案者は正確には専門家である必要はないのですが、彼らが十分な情報に基づいて意思決定できるように、どのような可能性があるかを伝える専門家が必要です。
これは単なるトップダウンではなく、循環型の構造をとると、私は考えています。企業からボトムアップで統治機構に情報を提供し、そこから経済界に情報をフィードバックされることもあれば、トップに実業界が来ることもあります。なぜなら、政府は税収なしに何もできないからです。経済は政治の中にあり、政治は経済の中にあるのです。
各分野で日独が相互に学び合う
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