日本企業は倫理資本主義を実践できるのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(3)
東洋経済オンライン / 2024年10月29日 10時30分
私がいつも引き合いに出すのが、京都で花札製造から始まった任天堂の事例です。任天堂は常に新しい環境に適応し、直近の新型コロナウイルスによるパンデミックで大復活を遂げました。ロックダウンのときにはみんながゲームをしたので、勝ち組企業となったのです。
遠い昔に終わったものへの回帰ではなく、今も残っているものを現代化して刷新する。これからの日本の利益は、そこにあるのだろうと思います。これはアメリカナイズでは絶対にうまくいきません。
名和:日本には果たすべき役割があり、新しい方法で伝統的な考え方に立ち返ることができるというご見解は心強いですね。私たち日本人は自分たちがしていることをうまく伝えるのが苦手です。任天堂のゲームを輸出するのはいいことですが、その裏には思想がある。
ガブリエルさんはよく来日されるのでお気づきだと思いますが、そうではない世界の人々に日本の哲学や日本流倫理資本主義の価値を知ってもらうには、どうすればよいのでしょうか。
日本とドイツが手を携えて倫理資本主義をリードする
ガブリエル:それは、私が今まさに哲学的な実践のなかで行っていることだと思います。私は、NTTや日立などの企業が参加する京都哲学研究所のシニア・グローバル・アドバイザーになったばかりです。私が実現したいのは、倫理資本主義に基づく自由民主主義国家のグローバルな協力体制を構築することです。
どの国も単独ではできません。日本が世界最大の経済大国でないのは限界があるからです。場所も人も限られています。もちろん、知能革命で規模は拡大できますし、さまざまな可能性があります。それでも、最大の経済大国になるためには物質世界の基礎が必要です。それはドイツも同じです。
日本とドイツは基本的に同じリーグでプレーしていますが、私たちが特定の規模で活動するのには理由があります。この特別なケースにおいて、日独両国は現在、非常に明確に自由民主主義にコミットし、政治的に良好な状態で、自由民主主義に関する問題もまったくありません。
自由民主主義を支持する議論はいくらでもできます。両国のかつての歴史に比べれば、倫理的にもいい状態です。私たちは今、真の有志連合を結成する必要があります。そのうえで、すべての自由民主主義国家、フランス、イタリア、北欧諸国、アメリカ、イギリス、そして、特にアフリカとラテンアメリカにも広げて、チームをつくればよいと思います。
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