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「当たり前に暮らせる」児童養護施設が目指すこと 地域に開いた実籾パークサイドハウスの挑戦

東洋経済オンライン / 2024年11月1日 9時40分

両者の思いが一致し、藤堂さんは公務員を辞めて「福祉楽団」に転職し、新しい道を拓くことにした。そして2021年、千葉県が出した「民間児童養護施設の整備事業者の公募」に手を挙げ、実籾パークサイドハウスの実現に向けて動き出した。

地域に開かれた社会的養護を行う施設に

もともと農業を学んでいた飯田さんは大学3年生の時、母親が社会福祉法人の設立の準備をしている最中に急逝し、引き継いだ。新たに福祉を学び直し、2001年に「福祉楽団」を設立した。

「楽団」というユニークなネーミングは、周囲と協調しながら自分の音楽を奏で、全体としてハーモニーをなすオーケストラのありようが、民主的な社会における福祉に通ずるところがあることに由来する。

その後、2012年には、障害のある人や、少年院からの出院者の就労支援を行う「恋する豚研究所」を千葉県香取市に開いた。生肉の卸売をはじめ、ハムやソーセージなどの製造を手がけ、食堂も運営している。

そんな飯田さんは、実籾パークサイドハウスを「地域に開かれた社会的養護を行っていく複合施設」と位置付ける。

施設の全体像を描いたスケッチを見せてもらった。大きな建物ではなく、いくつかの小さな建物が点在し、間を道がつないでいて、周囲に向かって開かれている。

多くの施設では50人、100人の子どもがともに暮らしているが、ここではより“普通の家”での暮らしができるように、6人が1つの家に住むことを想定し、全員に個室がある造りに。児童養護施設が36人、一時保護所が6人、子どものショートステイが6人の定員としている。

また、同じ敷地内に、高齢者のグループホームや障害のある子どもの放課後デイサービスの施設、誰でも使えるバスケットコートなどを設え、外部の人も内部の人も、幅広い年齢層が行き交う場にしたい考えだ。

子どもにとって「当たり前の暮らし」を

こうした施設は、ともすると、管理や安全性への配慮から、閉じた施設になってしまいがち。しかし、「さまざまな人と子どもが交じり合い、地域をゆるやかにつながっていく。そういう環境で、子どもは安心して生活できる」と飯田さんは捉えている。子どもにとって「当たり前の暮らし」を実現しようとすると、従来の施設でリスクとされてきたことをやることになるのだ。

が、理想を実現するには周囲に何もない場所ではなく、さまざまな人が暮らしている土地を探さなければならなかった。Googleマップで空き地を探し、ここと思ったところを訪れて交渉を重ねた。

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