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「さらばモデル年金」誰も知らない財政検証の進化 女性活躍推進、子育て支援は重要な年金政策だ

東洋経済オンライン / 2024年11月1日 19時30分

そうした中で、モデル年金の所得代替率が何割下がると言われても、それが自分の、今と老後の生活とどんな関係があるのか想像することは普通はできないでしょう。これが冒頭に述べた、健康診断と言いながら、実は理解することが難しいという意味です。

それどころか、年金の不安をあおりたい人たちは、モデル年金の目的外使用を繰り返し、所得代替率の低下率を用いて、あたかもその割合で現在の給付月額が下がるかのような不思議な話をし続けてきたので、年金への将来不安は増すばかりでした。

モデル年金を超える試みの歴史

こうした背景があり、財政検証ではモデル年金の所得代替率を調べると同時に、モデル年金の設定を超えた試算を別途行う試みが徐々に進められてきました。

2004年年金改革の5年後、2009年の第1回財政検証には、法定検証しかありませんでした。法律上の仕事としてはそれで十分だったからです。

2014年の第2回財政検証のときには、法定検証に加えて、たとえば、モデル年金上の被保険者期間40年を45年に延ばす改革をした場合の試算なども行われました。これは将来に向けた改革の選択肢を示す試算であるため、オプション試算と呼ばれました。

また2019年の第3回財政検証では、さらに幅広い想定で試算を行う資料4「財政検証関連資料」も作られ、たとえば2019年に65歳の人の所得代替率61.7%と同じ水準の年金は、同年20歳の人は66歳9カ月まで働いて保険料を納めれば受給できるというような試算、つまりは、モデル年金上の被保険者期間の延長と繰り下げ受給の効果を組み込んだ試算もなされました(「今年もまた繰り返すの?財政検証後の年金叩き」)。

そして今年の財政検証では、この関連資料4がバージョンアップされたわけです。

そこでは、出生コーホート別、すなわち生まれた年次別の老齢年金の平均月額やその分布が初めて試算されました。

このグラフは、各年代の人たちが65歳になったときに、どれだけの年金を受け取れるかを試算したものです。たとえば、一番左。2024年度末に65歳で老齢年金を受給している人たちの男女計の平均月額は12.1万円、月額20万円以上は9.1%です。

一方、一番右。現在20歳の人たちが65歳になったときの年金は、過去30年のような経済の停滞が続く場合は2024年価格で13.6万円ですが、経済成長が順調に進む場合には22.5万円になり、この場合の月額20万円以上の人たちは64.8%と大幅に増えます。

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