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「さらばモデル年金」誰も知らない財政検証の進化 女性活躍推進、子育て支援は重要な年金政策だ

東洋経済オンライン / 2024年11月1日 19時30分

さらに関連資料4には被保険者の構成割合の見通しという重要なデータもあります。これからは、自営業者などの国民年金1号、それに配偶者に扶養されている主に妻の入る国民年金3号の割合が低下して、厚生年金の被保険者である2号の割合が増えていきます。その変化の主な理由は、女性の厚生年金加入の増加によるものです。

ところが、モデル年金では女性はずっと専業主婦で3号のままです。モデル年金からは、今を生きる若い人たちが自分の将来を知ることができないわけです。

現実には、これからは、女性が厚生年金に加入している期間が長くなります。

たとえば、グラフの一番左。現在65歳の女性の厚生年金の被保険者期間は平均で17.2年だったのが、経済成長が順調に進みこれからも労働参加が進展すれば、一番右の現在20歳の女性が65歳になる頃には平均31.6年になることが見通されています。それに応じて現在65歳の女性の平均月額9.3万円は現在20歳の女性では19.8万円へと倍以上に増えます。

次の図をみてください。これはコーホート別(2024年度末の年齢別)に、65歳になったときに年金の平均月額が、男女それぞれ、どの程度の額になるのかを、2024年度年金額を100として見たものです(縦軸の目盛がケースによって異なるので注意)。

成長型経済移行・継続ケースでも過去30年投影ケースでも、男性の年金平均月額はモデル年金と同じように推移するのですが、女性の平均月額は、大きく伸びることが見込まれています。その理由は、男性の厚生年金被保険者期間は伸び代が少ないのに、女性はこれから厚生年金の被保険者期間が大きく伸びるからです。

もっとも、先に「足下の所得代替率確保に必要な受給開始時期の選択」でみたように、今はまだ若い人たちをはじめ、65歳以降まで繰り下げ受給を選択すれば給付水準は相当に高くなります。ここでも、男女を問わず65歳以上の人たちも働きやすくなる労働環境の整備が年金の給付の十分性を高めるためには効果がある政策であることがわかります。

公的年金保険制度というのは、その年に生産された付加価値(所得)の総計のうち、どれくらいを公的年金に回すかを決める所得の分配装置とも言えます。この分配装置は、日本では主に被用者保険として設計されています。

そのため、今はGDP(国内総生産)の1割強を公的年金に分けていますが、就業率が高まり被用者が増えれば、(長期保険であるためにタイムラグはありますが)GDPのうちから公的年金に分配される割合は高まっていきます。

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