3浪「東京藝大」黒歴史の浪人を"肯定できた瞬間" 合格後も受験時代の自分にとらわれていた
東洋経済オンライン / 2024年11月3日 7時40分
当時のすいどーばた美術学院では日本画専攻の受験生だけで100人を超えており、毎年10人以上の藝大合格者を輩出していました。名古屋より多くの受験生に囲まれ、揉まれ、合格までの距離感がわかってきた新家さんは、どうやったら講評会で合格圏内である10位以内に入れるかを考えていたそうです。
「夏の全体のコンクールでは、15番までには入れていたんです。ただ秋から全然描けなくなってしまい、その頃に新しく設置された(上位)20人ほどだけで構成される選抜クラスから外れてしまいました」
ただ実はこのスランプは、なんとかステップアップしたいという彼女なりに試行錯誤した結果でした。
「3浪目は何か新しいことをしないと壁を乗り越えられないと思っていました。それまではずっと『白バック』でモチーフを描いていたのですが、3浪目の春から夏の間、背景まで全部描くようにしました。
そのことで今まで白い背景を含めて作品であると意識できていなかったことに気がつきました。この対策のおかげで、四角い画面の隅から隅まで全部作品だという見方ができるようになり、最終的にはレベルアップができました。そのため秋から『白バック』に戻した直後は、またその表現に慣れていくのに苦労しました」
そのスランプも、予備校の課題とは別に自宅で取り組んだ細密描写によって克服したそうです。
例えば、描いたレタスを先生に見せて「不味そう」と言われた新家さんは、味や新鮮さをどうすれば表現できるかがわかりませんでした。
そこで「パリッとパリッと……」と心の中で唱えながら、客観的にレタスを見続けました。1枚目とは違うレタスが描けたとき、それまで「どんな作品がいいのか、どうするべきなのか」にとらわれていた新家さんは、「こう見えた、こう感じた」と自分なりの答えを描きながら探して表すことが作品を作ることなのだと気づくことができるようになりました。
スランプを乗り越えた新家さんは、11月ごろには選抜クラスに入れるようになり、作品の質も向上しはじめました。
2次試験で全力を尽くせた
この年の新家さんは、東京藝大に加えて多摩美術大学、武蔵野美術大学を受験しました。残念ながらこの年も多摩美術大学、武蔵野美術大学は不合格でしたが、各大学の試験を通して何が足りないのか自分なりに分析できたため、なんとか切り替えて藝大に臨めたそうです。
「藝大の1次試験はいい出来だったので1次は受かると思いました。その時はまだどこにも合格したことはなかったので、合格するという自信は持てなかったのですが、どんなモチーフが出ても、自分なりの方法で作品が作れるという感覚は確かに生まれていました。
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