3浪「東京藝大」黒歴史の浪人を"肯定できた瞬間" 合格後も受験時代の自分にとらわれていた
東洋経済オンライン / 2024年11月3日 7時40分
藝大の2次試験を受けたあとは、これでダメだったら、もうやれることはないなという心境になり、初めて浪人に疲れも感じ、これ以上は無理かなと思いました」
「これで落ちたら降参」というほど自分のすべてを出し切った新家さんは、ついに3浪で、1994年度の東京藝大の美術学部絵画科日本画専攻に合格しました。約750人受験し、合格者は26人。この年の倍率は約30倍にもなっていたそうです。
こうして4年にも及ぶ藝大受験の日々を終えた新家さん。浪人してよかったことを聞くと、「自分自身に自信を与えてくれた」こと、頑張れた理由は「自分はまだ成長できると思っていたから」と答えてくれました。
「深く何かを追求したり、取り組んだりすることで自分の生き方や、モノの見方や生き方の指針の基礎になるようなものが作られました。それが浪人生時代だと思います。
私は、予備校に通う日々の中で、全然描けなくなっても絶対に休みませんでした。どんなに変な絵を描いて恥ずかしくても、最後までやり抜くと決めていました。自分に自信を与えられるのは自分しかいない、と思っていたからです。それが唯一浪人時代の自分を支えていたものでした。あのとき逃げなかったという経験が、今の私のことも支えてくれていると感じています」
浪人時代から抜け出せた瞬間
東京藝大を卒業してからの新家さんは、1年間の就職浪人を経て、東京都の教員採用試験を受けて、高校の美術教員になりました。
その後、日本女子大学附属豊明小学校で6年間図工の教員をして、2006年に愛知県瀬戸市に戻り、2008年にアトリエmaruをオープン。現在は幼稚園の年中から70代まで、生徒約45人に絵や工作を教えています。
「実は私は、かつて浪人の経験を黒歴史だと思っていました。絵はいろんな表現ができるのですが、受験で突き詰めてきた写実的な表現から抜け出せず、浪人当時に描いていた絵に自分が縛られている感覚があったんです。
合格できたのはとてもうれしかったですが、浪人時代の時間にとらわれていました。ですが、15年前に娘を出産してから、浪人時代の認識が変わっていきました。分娩していたときに見えた風景があって、それを作品にしたいと思ったんです」
「自分の中で起こった体の変化のおかげで、何かを見た時にそのイメージを重ね合わせて絵を作れるようになっていきました。そうした抽象的な絵を描くようになったときに、この絵の基礎は、画面の隅々まで神経を行き渡らせて、責任を持って作品を仕上げていた受験時代に培ったものと認識できるようになったんです。今は浪人時代の自分を前向きに受け入れられて、当時の自分にありがとうと言いたい心境ですね」
今でも表現を真摯に突き詰めている
来年には、個展の開催が決まったと語る新家さん。今は、寺の襖絵制作の依頼も受けており、自身の画文集出版に向けても動いています。現在の彼女の作品に向かう姿勢は、紛れもなく、表現を突き詰めてきた浪人時代が培ったものなのだと思いました。
新家さんの浪人生活の教訓:悪い状態でも逃げなかったことが、今の自分の自信につながっている
濱井 正吾:教育系ライター
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