夫婦揃って「退職→1年半の旅」に出た人に起きた事 「人生を効率よく歩んでいかねば」の焦りに直面し…
東洋経済オンライン / 2024年11月3日 9時0分
病気、育児、介護、学業などによる離職・休職期間は、日本では「履歴書の空白」と呼ばれ、ネガティブに捉えられてきた。しかし、近年そうした期間を「キャリアブレイク」と呼び、肯定的に捉える文化が日本にも広まりつつある。
この連載では、そんな「キャリアブレイク」の経験やその是非についてさまざまな人にインタビュー。その実際のところを描き出していく。
キャリアブレイクは、かならずしも1人でとるものとは限らない。パートナーとともに離職・休職期間をとるというパターンもある。
今回は、同じタイミングに仕事を辞め、1年半、世界各国を旅した夫婦のエピソードを紹介したい。
「人生が決まってしまう」という不安
結婚をし、家を購入しようとハウスメーカーの話を聞いて、ローンも検討中。望んでいた人生のコースを、着実に歩んでいる……はずだった。
AIに関するスタートアップでコンサルタントとして働く中村拓哉さん(当時32歳、仮名)の頭には、「本当にこれでいいのか?」という疑問が浮かんでいた。
「当時は、焦っていました。仕事で成長をして、結婚して、家を買って、子どもをもって……。『人生を効率よく歩んでいかなければ』という感覚になっていた。
でも、ローンを組んだら、仕事は簡単には辞められなくなる。子どもができたら、気軽には旅にも行けなくなってしまうかもしれない。『人生が決まってしまう』ような不安がありました」(拓哉さん)
拓哉さんの頭の片隅にあったのは、大学生の頃の旅の記憶。バックパッカーとして訪れた南米に、魅了された。それ以来、ふたたび海外を旅したいという思いを胸に秘めていた。できるなら、今度はパートナーと一緒に。
妻の中村詩歩さん(当時28歳)は、IT企業でマーケティングやウェブディレクションの仕事をしていた。友達や家族から「子どもはどうするの?」と聞かれることもあり、「自分も、子どもを生んで、家を買って……というルートを歩むのかな」と思っていた。
けれど、現状に満足しているかといえば、そうではなかった。
「心から仕事を楽しめているわけではなかったんです。『仕事に必要なのは、我慢力だ!』という気持ちで働いていました。だから、『一度なにかを変えてみたい』という気持ちは、心のどこかにありましたね」(詩歩さん)
「いつか行けたら」なんて言っていられない
転機のきっかけとなったのは、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻だ。
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