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最高哲学責任者(CPO)で会社はどう変わるか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(4)

東洋経済オンライン / 2024年11月5日 13時0分

CPOは大学などで訓練を積み、哲学や倫理など学問領域の概念ツールを習得しています。神経科学、行動経済学、計量経済学なども学び、いろいろな概念を熟知しなくてはなりません。

それから実践に至るわけですが、ここでも問題が生じます。その時々に解決しようとする問題は企業によって千差万別です。AI企業では、インフラ企業と異なる倫理観が必要となるでしょう。

したがって、専門家は運用に完全に携わる少人数の専門家チームでなければなりません。優秀な人材を獲得し育成することもモチベーションの一部で、本当にワクワクする仕事だと思います。

これは応用倫理学ではなく「具体倫理学」だと私は考えています。東京大学教授の中島隆博さんは「共生」という考え方を示されています。具体倫理学は共生倫理で、共に物事を行い、共に成長します。これもボトムアップとトップダウンの相互の循環構造をとります。

名和:互いに争うよりも、共生を規範としなくてはなりませんね。

生命科学の概念を経済の議論に持ち込む

ガブリエル:人間は動物ですから、私たちの経済活動はある種の合理的動物の活動です。たとえば、人間の細胞にはウイルスが組み込まれて、共生しています。細胞の構造そのものが感染症考古学であり、ウイルスやバクテリアは進化の原動力となってきました。

パンデミックでは、ウイルスの世界が人間の世界を攻撃します。それに対して、ワクチンで免疫を獲得し、感染をコントロールするのが現代的な解決方法です。

そこで何が起こったかというと、私たちはまずウイルスと闘い、次にウイルスを私たちの生命体に統合することで、共存することを学んだのです。免疫とは他の自然と共存する方法であり、人間の身体は非常に複雑な免疫システムを持っています。

経済も同じように考えたいと思っています。免疫学に代表される生命科学の最先端の概念を経済の議論に持ち込むのです。

名和:ところで、ガブリエルさんのような哲学者や社会学者は希少な存在です。企業が社内に哲学者やCPOを置くには、どうしたらいいのでしょうか。外部の専門家が何社か掛け持ちする形になるのか、それとも各社がCPOの役割を内製化すべきでしょうか。

CPOとBS/PL

ガブリエル:まずは試行段階を踏むことです。哲学者を取締役に迎え、経験を積んでもらいます。

次の段階として、これを資本主義のエンジンに変えるためには、おそらくビジネスコンサルティング事業部をつくり、収益向上を目標にメンバーには給与や研究費を支払います。要するに、研究開発部門のようなものをつくって倫理資本主義をよりよいものにしていくのです。

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