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最高哲学責任者(CPO)で会社はどう変わるか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(4)

東洋経済オンライン / 2024年11月5日 13時0分

これは一足飛びには実現しません。私が提案したいのは、最先端の哲学を取締役会レベルに持ち込むところから始めて、そのうえで経験を積み、自社のビジネスに移転させることです。

ビジネスコンサルティングを事業部化するのは、企業はBS(貸借対照表)の数字をつくらないといけないからです。完全に経済的手段に転換させなければなりません。そうやって私たちの実践を明確化し、学んだことを実践に還元していくのです。

名和:今日のBSやPL(損益計算書)は、過去と現在を映し出したものにすぎません。未来を見据えて先鋭的で新しいものを考えるために、アカウンティングの人たちは、もっと創造的な発想をしたほうがよろしいのでしょうか。

ガブリエル:もちろんです。なぜなら、生活の質の向上を説明できるからです。ブータンの国民総幸福量指数をはじめとして、多くの経済学者が、さまざまな指標をいかに運用するか、質の高い指標にするかについて取り組んでいます。

そうした考えを経済にまで広げていくと、新たなアカウンティング人材が生まれ、新しい活動が始まるかもしれません。

「見立て」――日本再生の道は温故知新にある

名和:日本では何か新しいことを始めるよりも、ドイツ、アメリカ、イギリスなど海外に目を向けて競い合い、自ら新しいシステムを考え出そうとしない傾向があります。これは日本を再生させるときにはいい方法なのでしょうか。

ガブリエル:最近、茶道で「見立て」という素晴らしい言葉を知りました。

名和:禅の奥義に日常における「今、ここ(而今)」の大切さを知るように、あるものを別のものとして見て、その趣向を楽しむのが「見立て」ですよね。

ガブリエル:そうです。真似して対処するのとは違う、素晴らしい融合方法です。ハイデルベルクの有名な哲学者であるハンス=ゲオルク・ガーダマーは「地平融合」という素晴らしい概念を提唱しています。ある時代の文化が1つの地平であり、他にも地平がある。それらを融合させると、これまで見えなかった新しいビジョンが見えてくるというのです。

「見立て」もそういうもので、日本の近代化のサクセスストーリーをつねに担ってきたと思うのです。日本は他のアジア諸国のように侵略や植民地化されることなく、独自に近代化を果たしました。

日本の近代化は、私の友人の多くが思っているほど外的なものではありません。そうせざるをえなかったから近代化したのではなく、改革者たちは未来を見据えて、16、17世紀に、そして、明治維新後には、明らかに何かしないといけないと感じていた。

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