東京に「座るにも金が要る街」が増えた本質理由 疲れてもカフェに入れず途方に暮れるあなたへ
東洋経済オンライン / 2024年11月6日 8時30分
このジェントリフィケーションの結果、渋谷では「気軽に座れる場所」が減少していると、筆者は考えている。それはなぜか?
先ほども書いたが、基本的に渋谷に近年誕生しているビルには、ちょっとお高めのテナントが入っていることも多く、少し休もう、と思ってもそう気軽に入れないことも多い。また、そもそも高層階はオフィスやホテルになっていることも多く、「座る」以前に、金を払わなければ外部の人間は立ち入れないところも多いのである。
ちなみにジェントリフィケーションは、「新しい建物を作るときに発生するジェントリフィケーション」「商業施設を作るときのジェントリフィケーション」「観光地化するときのジェントリフィケーション」の3つに分かれるといわれている(黄幸「ジェントリフィケーション研究の変化と地域的拡大」/2017年)。
渋谷の場合は、この3つのすべてに当てはまっている。再開発により新しい建物が建ち、商業施設ができ、観光地化している。まさにジェントリフィケーションの最前線だといえる。
こうした変化と「座れないこと」は直接に関係するわけではない。しかし、実際に現地でフィールドワークを重ねていると、都市の高級化に伴って、より階層の高いターゲットに向けられた場所が増え、自由に立ち入ることができたり、座ってたむろしたりできる場所が少なくなる現象が、渋谷の各所で発生していることがわかるのだ。
② 防犯意識の高まり
次に、防犯意識の高まりについて。これは、何も悪いことではない。しかし、それに伴って起きている事態が、結果的に私たちを苦しめている。排除アートの問題だ。
渋谷には、いわゆる排除アートやいじわるベンチと呼ばれるものが数多くある。これは、本来なら人が集まる広場に置かれた奇妙なオブジェや、ベンチに付けられた謎の突起物を総称してそう呼ぶ。「アート」と呼ばれてはいるが、実態としては広場に人をたむろさせなかったり、ホームレスがベンチで寝ることを防ぐ役割を持っていて、そこから「排除」という言葉が付けられている。
排除アートについて精力的に発言をしている建築史家の五十嵐太郎は、こうした排除アートの代表例として、渋谷マークシティの東館と西館の間にある「ウェーヴの広場」を挙げている。さらには、本文冒頭で私が見た、渋谷公園通りにある座りにくいベンチもこの1つだろう。これらは若者やホームレスがそこに滞留するのを避けるためのオブジェである。
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