2029年に最低賃金1500円は「余裕で可能」な根拠 最賃の引き上げは「宿泊・飲食、小売業」の問題
東洋経済オンライン / 2024年11月19日 11時30分
最低賃金の引き上げにより「中小企業が困る」と言われることがありますが、これは事実ではありません。すべての中小企業が困るわけではなく、最低賃金で働く人の多くは宿泊・飲食業、小売業、生活関連サービス業・娯楽業、その他サービス業に集中しています。これは一部業界の問題であり、大企業の価格転嫁の問題でも、大多数の中小企業の問題でもありません。
また、最低賃金の引き上げは地方にとっての問題でもありません。大半の中小企業は大都市に集中しています。
最低賃金の引き上げは、働く人を安く使い捨て、貧困を強いる産業構造を改めるために不可欠な政策です。最低賃金を引き上げても、人手不足の現状では、失業率が上がる心配はありません。
最低賃金の引き上げが話題になるたび、経営者の団体から「中小企業が潰れる」「失業者が増える」「中小企業に支援を」といった声が上がります。
こうした声がありながらも、第2次安倍政権以降、最低賃金は306円(1.41倍)引き上げられていますが、それにもかかわらず中小企業数は純増し、就業者数も大幅に増加しているため、淘汰や失業者増加という予想は実現していません。こうした予想には信憑性がありません。
減税を支持する動きもありますが、人手不足が続く日本では、減税が持続的な経済成長につながるわけではありません。今の日本に求められているのは、減税ではなく、所得を増やすための「稼ぐ力」です。
「最低賃金1500円は可能か」データで分析
先に記事の概要を読んでいただいた上で、ここから本論に入ります。
先の総選挙では、多くの政党が最低賃金1500円を公約に掲げました。2018年から一貫して最低賃金の引き上げを主張してきた者として、最初は反対が多かったのに、ここまで浸透し一般的な考え方になったことを嬉しく思います。
石破総理は選挙前に、2029年までに最低賃金を1500円に引き上げることを明言しました。これは岸田政権が目標としていた2030年代半ばに実現する計画を前倒しする発言です。
2029年の実現は厳しいとする反対意見もありますが、感情論を抜きにし、エビデンスに基づいて評価すれば、完全に可能な目標です。
では、エビデンスを確認し、議論を冷静かつ具体的に進めましょう。
まずは、最低賃金で働く人数を特定する必要があります。残念ながら、最新かつ十分なデータはないため、既存のデータを基に試算するしかありません。
2014年の厚生労働省のデータによると、最低賃金の1.15倍以下の賃金で働く労働人口は約420万人でした。しかし、2009年は約260万人だったため、今はさらに増加していると考えられます。
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