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2029年に最低賃金1500円は「余裕で可能」な根拠 最賃の引き上げは「宿泊・飲食、小売業」の問題

東洋経済オンライン / 2024年11月19日 11時30分

厚生労働省のデータによると、2020年の時点で、最低賃金の1.1倍未満の、いわゆる最低賃金近傍で働く労働者が全体の14.1%を占めるとされています(直近のデータでは、最低賃金近傍の定義が1.15倍から1.1倍に変更されています)。これをベースにして試算します。

問題は労働人口をどう考えるかです。さまざまなデータがあります。

2024年8月の就業者数は、『労働力調査』によると6815万人でした。その中で、自営業や役員を除いた雇用者数は5786万人であり、その14.1%は816万人に相当します。

『中小企業白書』によると、直近の労働人口は4748万人であり、その14.1%は669万人となります。

『法人企業統計』の2023年度データでは、労働人口は4401万人でした。その14.1%は621万人です。法人企業統計はフルタイムが基準のため、現実的なデータだと思われます。

とはいえ、最低賃金を引き上げれば、その影響を受ける人は増加し、特に若年層の正規雇用者にも影響が出始めるため、ここでは800万人を基準にします。

厚生労働省の統計には若干の問題もありますが、最低賃金近傍(1.15倍以内)で働く労働者数が2009年に約260万人、2019年に約420万人と推移しているため、800万人という試算は現実的であると考えられます。

企業の負担増を推計する

さて、2029年に最低賃金が1500円になると、2024年の加重平均である1055円から445円の増加となります。年間2000時間働くとして、これを800万人に掛けると、7.1兆円の増加となります。この前提では、所得制限によって時間を調整している人が多くいる点を無視しているため、実態より多めの試算となります。

5年間で445円上げる場合、単純計算では毎年89円の引き上げが必要です。これによって、毎年1.4兆円の増加が見込まれます。

次に、日本企業の利益などと比較して、この負担がどれほどのものかを評価していきましょう。

「全企業」「中小企業」それぞれの負担感は?

毎年の1.4兆円分を、2023年度の『法人企業統計』にある全規模の企業データ(金融を除く)と比較してみます。

付加価値は340.3兆円なので、1.4兆円はその0.4%です。人件費は197.6兆円なので0.7%、営業利益は75.6兆円なので1.9%、経常利益は106.8兆円なので1.3%に相当します。このように見ていくと、最低賃金引き上げによる1.4兆円の追加負担は、それほど大きな負担とは言えません。

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