2029年に最低賃金1500円は「余裕で可能」な根拠 最賃の引き上げは「宿泊・飲食、小売業」の問題
東洋経済オンライン / 2024年11月19日 11時30分
中小企業は336万社もあるため、最低賃金で働く労働者がすべての中小企業やすべての業種に均等に分布しているわけではなく、すべての中小企業が最低賃金1500円に耐えられないわけでもありません。
実際のデータを見ると、最低賃金で働く人の割合14.1%を上回る業種は、宿泊・飲食業34.2%、卸売・小売業22.8%、生活関連サービス業・娯楽業21.0%、その他サービス業15.9%です。消費者に最も近い業種ほど、最低賃金で働く比率が高いことがわかります。この4つの業種は全労働人口の51.5%しか占めていませんが、最低賃金近傍の労働者の約6割を占めています。
したがって、政府は「中小企業を支援する」とするよりも、これらの4つの業界などの生産性向上をいかに実現するかに注力すべきです。
中小企業の経営者団体は、同調を求めるために「地方が困る」と主張しますが、これも誤った理屈です。
地方では中小企業で働く人の割合が高いですが、実際には中小企業の多くは大都市に集中しています。
中小企業庁の『中小企業白書(2024年版)』によれば、336万4891社の中小企業のうち、東京都、大阪府、愛知県にあるのは87万5979社であり、全体の26.0%を占めます。上位5都府県の中小企業は全体の36.0%、上位10都道府県では54.4%に達します。逆に、下位23県の中小企業は全体の20.8%しかありません。
そもそも、東京と地方の最低賃金の差が大きくなると、東京への一極集中が進むため、地方でも賃上げを行うメリットは非常に大きいです。問題が発生した場合には、地方創生で対応すべきでしょう。
経営者団体が不安を煽るような感情論に訴えることは、根拠に乏しく、不当な主張と考えられます。
なぜ労働者が犠牲にならなければならないのか?
日本の最低賃金は先進国の中で最低水準です。物価が上がり、社会保険料などの税負担も増加している中、賃金は物価や税金の上昇を上回るように引き上げなければなりません。
しかし経営者団体は、「中小企業は1500円を支払えない」と主張します。
人手不足が深刻な現状では、一部の企業の雇用が減少したとしても、失業率が上がるとは考えにくいです。それにもかかわらず、1500円も支払わない企業を存続させるために、なぜ労働者の賃金が上がらず貧困を強いられるのでしょうか。
経営者には生産性を向上させ、賃金を上げる努力が求められています。生産性を上げて賃金を上げられない経営者は、経済同友会の新浪剛史氏が指摘するように、経営者として失格です。
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