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深刻なプラスチック汚染、生産自体に総量規制を 汚染研究の第一人者が期待する条約制定

東洋経済オンライン / 2024年11月21日 8時0分

プラスチックゴミが散乱する、長崎県五島列島の奈留島の海岸(提供:高田秀重・東京農工大学教授)

2024年11月25日から1週間にわたり、韓国・釜山(プサン)でプラスチックによる環境汚染に歯止めをかけるための条約制定に向けた国際交渉が行われる。悪化の一途をたどる汚染の実態や、条約に盛り込むべきテーマについて、プラスチック汚染研究の第一人者である高田秀重・東京農工大学教授にインタビューした。

――プラスチック汚染に歯止めをかけるための条約の必要性をどうお考えですか。

【図】世界の海鳥の半数からプラスチック添加剤が検出

プラスチックによる環境汚染は、特定の国だけが取り組んで解決できる問題ではない。日本海の沿岸には、中国や韓国、台湾などから出たプラスチックゴミが大量に漂着している。日本から流れ出たゴミは、ハワイやアメリカ、カナダの西海岸に行き着いている。誰もが加害者である一方、被害者でもある。すべての国が一致団結して対策を講じなければ解決できない問題だ。その点からも条約制定に期待している。

これまでもプラスチック汚染問題については、G7(主要7カ国)やG20(主要20カ国・地域)などで取り組み方針が合意されてきた。また、各国がそれぞれレジ袋の削減などを呼びかけ、ある程度の効果があったことも事実だ。しかし、呼びかけに応えた人だけが削減努力をするだけでは問題の解決にはほど遠く、環境中へのプラスチックゴミの流出量は増え続けている。法的な拘束力を持った国際的な規制が必要だという認識から、2022年の国連環境総会で条約の必要性が決議された。

人体への蓄積も明らかになりつつある

――高田さんは化学物質による環境汚染の研究の専門家として、プラスチックの問題に取り組んでこられました。

ウミガメやクジラ、海鳥などの野生生物がプラスチックを摂食して体内に取り込んでしまうといった問題は、これまでに多数報告されてきた。最近ではそうした野生生物への影響のみならず、人体への蓄積についても広く明らかになりつつある。

イギリスのリチャード・トンプソン氏は20年ほど前に「マイクロプラスチック」(直径5ミリメートル以下の微小なプラスチック)という概念を初めて提唱した研究者だ。

彼は2024年9月に人体から検出されたマイクロプラスチックの実態についてまとめた研究論文を「サイエンス」誌に発表した。同論文によれば、肺や肝臓、腎臓などさまざまな臓器や血液から、マイクロプラスチックおよびそれよりもはるかに小さいナノプラスチックが検出されている。

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